河の神と貧乏神


「…そもそもね、『貧乏神』って名前がまずいけねぇや。」


自分で言って自分の言葉に納得したのか、「うんうん」と頻りに頷くケント。

その様子をハクはただ静かに見下ろした。


「さもあたしらが貧乏そのものを引き寄せてるみてぇに勘違いされちまって、昨今じゃあどこ行っても塩対応だ。その点、『油屋』の姐さんは流石商売人だぁね。「割に合わない」なぁんて言いながらも、なんやかんやと毎度あたしのことを持て成してくれるんだから!」


ケントがからから笑う度、その身体がぶらぶらと揺れる。

辛うじてそれを支える、まるでぼろ雑巾のような外套は今にも破れそうだ。


以前「一張羅だ」と言っていたそれだ、破れては困るだろうに。


いや、そもそも―…



「…ところで、ケント。」

「んん?」

「そなたは何故、そのようなところで逆さ吊りになっているのだ?」

「………………」


そのようなところ、とは『油屋』正面に位置する渡り橋の欄干。

仕事から戻ってきたハクが偶然、そこに引っ掛かるケントを見付け、足を止めたのはつい数分前のことだ。


外套の破れ具合から見ると、もう随分と長くその状態でいるらしい。

恐らくもう少し遅ければケントは「ぽちゃん」と水に落ちてしまい、ハクも気付くことなく、そのままその上を通り過ぎていたことだろう。


「…相変わらずくぅるだねぇ、あんた。」


そしてケントは青白い顔で、ただただ笑うのだった。




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『油屋』の女主人が礼儀のなっていない客を叩き出したのは数時間前のこと。

その時、それに巻き込まれた憐れなものがいたことなど、誰も気付きはしなかったという。


(ほら、「名は体を表す」と申しましょう?)
(どうやら存在感まで貧相になっちまったようで)


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嘘つき、ロンリー。