姫の師と谷の守人
一旅終える度に谷の者達の歓迎を受け、ジルの下に顔を出す。
そして大ババ様から戒めのような言葉を一つ二つ賜って、それから、
「うちは宿屋じゃねぇんだがなぁ。」
そう呆れたように笑いながら出迎えたケントだったが、手慣れた様子でマントを受け取ると私を中へと招き入れた。
久し振りに足を踏み入れたケントの部屋は、最後に見た時とほとんど変わらない。
必要最低限の家具と窓辺の植物、そして幾つかの、あまり統一感のない装飾品の置かれた一角。
それらを見渡して、口元が緩む。
「飯は?ジルのところで食ってきたか?」
「いや…ケントの手料理が食いたくてな。」
「そりゃあ、責任重大だ。」
マントを壁に掛け、「適当に座って待ってろよ」と振り向いたケントに曖昧な返事を返す。
それが気に入らなかったのか、ケントは眉を顰めて首を傾げた。
「どうした?」
ケントの問い掛けに、今度は答えない。
我ながら子どもじみたことをしていると分かってはいたが、それでも私は待っていた。
ケントが、それに気付くのを。
儀式、などと大層なものではない。
ただ一旅終える度に谷の者達の歓迎を受け、ジルの下に顔を出し、大ババ様から戒めのような言葉を一つ二つ賜って、それから、
「………あぁ、そうか。」
すると、ようやく気付いたのか、ケントはまた呆れたように、でも嬉しそうに笑った。
「お帰り、ユパ。」
「あぁ、ただいま。」
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(そして、時々持ち帰るそれら品々の意味を、)
(彼がそれと知るのはいつのことだろうか)
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嘘つき、ロンリー。