猫男爵と人形


「時々、僕は恐くてたまらなくなるんです。」


何気ない、いつもの穏やかな口調。

それがあまりにも自然すぎて、私はつい聞き逃しそうになった。


「恐い…というと?」


そう先を促せば、少し困ったように眉尻を下げて微笑むケント。

その表情がどこか陰りを帯びて見えたのは先入観だろうか。


「僕達は魂を持っているとはいえ、元は人形でしょう?それがいつ動けなくなるかと思うと…こうやって先生とお話も出来なくなると思うと、恐いんです。」

「ふむ…」


ケントの告白に、私はそっと顎に手を添えた。

「大丈夫だ」と口にするのは簡単だが、それでケントの不安を完全に取り除くことは出来まい。


慎重に言葉を選んでいると、ケントが小さく息を吐くのが聞こえて来た。


「…ならば、こうしよう。」

「先生?」

「君と私とで何か約束事をするんだ。」


やくそく。

声には出さずに復唱するケントの口元を見つめ、私は大きく頷いた。


「どんなに細やかなことでも構わない…一つ約束を果たせば、また次の約束を結ぶ。」


そうやって繰り返せば、『次』が来るまで自分の時間を生きることが出来る。

ケントも私も、人形に戻る暇もないほどに。


「ふむ…まずは明日の茶会でもどうかな?」


そう提案すれば一瞬、きょとんとするケント。

そして次の瞬間にはまた、いつものように笑ってくれるのだった。




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(折角ですし、ムタさんやトトさんも誘いませんか?)
(いや、それは次の約束のために取って置くとしよう。)


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。