巷で噂の魔法使いと兄弟子
「…これが狙いか。」
野暮用で兄弟弟子の下を訪れたはずが、気付けば泊まる羽目になってしまった翌日。
朝に弱いハウルから爽やかな笑顔で起こされた時点で嫌な予感はしていた。
そして朝一で渡されたのは、エプロンとフライパン。
「…本当にエプロンはいらない?服が汚れるよ。」
「だからってゴスロリはねぇだろ。」
「可愛いのに…」
「アホか。」
なんてやり取りの末、俺の手には何故かフライパンがしっかりと握られていた。
「すっかり絆されてるなァ」とどこからか厭味な笑い声が聞こえたので、炒めていた芋の重さを数百倍にしてやる。
「潰れる!潰れちゃうよ、ケント!」
「黙れ。調理機の分際でしゃべるな。」
「オイラは悪魔だぞ!」
「なら悪魔の分際でしゃべるな。」
ついでにフライ返しでガンガン叩いていると、その腕を後ろから伸びてきた手に捕まった。
耳元に顔が寄せられる。
「カルシファーばかり狡いな…僕にも構ってよ、可愛いお嫁さん。」
「…誰が嫁だ。離せ、こら。」
乱暴に手を振り払ったものの、ハウルは俺の背後から動こうとしない。
というか、無駄に近い。
暇ならタマネギとベーコンを取れ、と苦し紛れに言い付ければ「はい!」と元気に答えたのはマルクルだった。
「これでいいですか、ケントさん!」
「……ありがとう。」
可愛いマルクルの頭を一撫でし、ハウルが何か口を開く前に肘鉄を食らわせる。
急に蹲ったハウルを見て不思議そうにマルクルが首を傾げた。
「気にするな、マルクル。それよりもう一つ頼んでいいか?」
「え、あ、はい!」
食器の用意へと駆けていくマルクルの背中を見送り、「さて、」とカルシファーに向き直る。
「自主的に黙るか無理矢理黙らせて欲しいか、選べ。」
その後、静かにはなったものの、がたがたと揺れる炎のせいで少し調理がやりづらかった。
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(台所は戦場?)
(いいえ、独裁国家です)
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アンケートより。
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嘘つき、ロンリー。