巷で噂の魔法使いと兄弟子


いつもの場所にいつもの後ろ姿。

てっきり読書でもしているのだろうと近寄ってみれば、


「…あら。」


その手元を覗き込んで、マダム・サリマンは思わず目を細めた。


「懐かしいですね。」

「…先生…」


古びた一枚の写真。

写っていたのは幼き頃の愛弟子達だ。


それも、今はもうここにいない弟子が髪を染めるよりずっとずっと前の。


「どうしたんです?その写真。」

「…なくしたと思っていた本に挟まっていたんですよ。」

「本に?」


それにしては、とテーブル上に視線を移せば、似たようなものが何枚も散らばっている。

到底一冊の本に収まるとは思えない数だ。


その視線の意味に気付いたのか気付いていないのか、溜息一つ吐いてケントはその内の一枚を手に取ってみせた。


「この頃はまだ可愛げもあったんですけどねぇ…」


泣き虫で弱虫。

わがままで自己中心的。

その上、情熱の向け方を間違えては才能を無駄遣いしてばかり。


子供の頃は許されていたそれらも、成長した今では目に余るだけだ。


「本当図体ばかりでかくなりやがって、中身は全く変わっちゃいねぇ…」


そう舌打ちと共に最後に付け足されたのは恐らく、聞かせるつもりのない言葉だったはず。

それを聞きながら苦笑したサリマンは、ケントに倣うようにして写真を一枚手に取った。


そして今度は口元を緩める。


「…ふふっ、本当に変わりませんね。」


写真の中で、少年に抱き着かれたもう一人の少年。

彼は迷惑そうに顔を顰めながらも、どこか笑っているように見えた。


ちょうど今、目の前にいる愛弟子のように、だ。





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そして時々姿を見せなくなる弟子の行方を、その師が問うことはしなかった。

(何やかんやで“兄弟”弟子ですから)


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。