案山子王子と悪い魔法使い


「魔法は解けてしまったようですねぇ。」


国に戻ると、あの『悪い魔法使い』がにこにこと私を待ち構えていた。


「いやですねぇ。『悪い魔法使い』なんてそんな、人聞きの悪い。」

「…心を読まないでくれないか、ケント。」

「読んでなどいませんよぉ。読まなくても王子は分かりやすいですからねぇ。」


くつくつと肩を震わせて笑う姿はやはりどう見ても『悪い魔法使い』だ。

そう心の中でもう一度思ったせいか、ケントは困ったように眉尻を下げて私を見た。


「第一、あれは王様の命令でしたからねぇ…私ごときに拒否する権利などなかったのですよぉ。」

「…私を『かぶに変えろ』と?」

「えぇ、王子を『かぶに変えろ』と。」


ケントは王族に対しても平然と嘘を吐く男だ。

恐らくこれも嘘だろう。


たとえ本当に父上が命じていたとしても、「どうにかしろ」程度しか言っていないに違いない。


「しかし、かぶに口づけとは…よほどの物好きか、かぶ好きがいたものですねぇ。」


それでその未来のお妃様はどちらです?


そう言ってまたにこにこと首を傾げるケントに、一瞬ぐっと言葉が詰まった。


「それが…」


『愛する者にキスされないと解けない魔法』。


そのおかげで私は本当の愛を知ることが出来た。

だが、愛する彼女にはすでに別の相手がいて…


そう事情を説明すると、ケントはますます笑みを深めていった。


「なら今度は定番通り、カエルで行ってみましょうか?」





--------------
愉しければ何でもいい、『悪い魔法使い』。

(何故父上は、彼のような男を傍らに置くのか)
(私には到底理解出来なかった)


---------------
アンケートより。
リクエストありがとうございました!




戻る

嘘つき、ロンリー。