巷で噂の魔法使いと紳士


「モテる男は辛いね、ハウル。」


そう言って笑うのは、小綺麗な身形に小さな花束を抱えた男。

人通りの多い往来を歩けば、きっと道行く女性達の視線を一身に集めるに違いない。


だが彼が今いるのは人気のない路地で、傍には魔法使いが一人いるだけだった。


「笑い事じゃないよ。」

「ふふっ、でもわざわざ魔法で足まで止めさせて、何かと思えば…普通に呼び止めてくれたら良かったのに。」

「普通に呼び止めても気付いてくれなかったのは、どこの誰だったかな?」

「おや、それは失礼。」


戯けるように小さく肩を竦め、男は謝罪を口にした。

そして「しかし『荒れ地の魔女』か…」とぽつりと呟く。


「頼むよ、ケント。」

「手を貸してあげたいのは山々なんだけどね、先約があるんだ。」


この恰好を見て、分かるだろう?

なんて言外に含ませて、軽く花束を掲げてみせる。


すると今度は魔法使いが肩を竦めた。


「ケント、彼女は君にとって何番目になるんだい?」









「…仕方ないな。ねぇ、そこのお嬢さん。」

「えっ」

「良かったら、この花を受け取ってくれるかな?」


男はそこにたまたま通り掛かった少女を捕まえ、持っていた花束をそのまま差し出した。

突然のことにどぎまぎしながらも、男の柔らかな笑みにつられて受け取る少女。


「あ、ありが…」


そして礼を言おうと顔を上げた時には、もうそこには誰もいなかった。





とある少女の昼夢

残されたのは小さな花束と、宛名のないメッセージカードが一枚。

(この埋め合わせはいずれ必ず)
(君の心臓が、魔法使いに喰われるまでには)


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76000hitより。
キリリクありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。