火の悪魔と港町の少年
じいちゃんに連れられて来たのが最初だった。
『魔法使い』ジェンキンス、の家。
本人を見たことはないけれど、その弟子だという人はおれと同じくらいの身長で、いつも不機嫌そうな顔をしている。
それに家の中は奥に進めば進むほど薄暗く、クモの巣なんかもあったりして少し、怖い。
最近では足を悪くしたじいちゃんの代わりにおれ一人で行くようになったけど、何度行ってもその空気に慣れることはなかった。
そんな時だ。
暖炉の炎が、突然しゃべりだしたのは。
「目か、心臓?」
「あァ!」
まじないの準備をする魔法使いの弟子を待つ間、何気なく「きれいな火…」と呟いたおれに自慢げな相槌を打ったのは『火の悪魔』カルシファー。
魔法使いとの契約で今は暖炉から出られないけど、本当はものすごい悪魔なんだと教えてくれた。
よく分からないけど、この家がここに存在しているのもカルシファーの力らしい。
「どっちかくれるなら、もっともーっとスゴいのを見せてやるぞォ!」
赤かったはずのそれが何故か今は青く燃えていて、ますますきれいだった。
(これよりももっと、すごいもの?)
そう考えると、胸がドキドキする。
「目はだめだよ。見えなくなっちゃう。」
「じゃあ心臓かァ?」
嬉しそうな声を上げるカルシファー。
どうやらカルシファーは目よりも心臓の方が欲しいみたいだ。
あげても死なないと言っていたから、そんなに欲しいなら別にあげてもいいんだけど、でも、
「心臓も…だめ。」
「エェ?何だよ、ソレ!」
「だってお母さんが言ってた。『きれいだ』って感じるのは心があるからだって。」
そっと胸の上に手を置いてみる。
相変わらずそれはドキドキと鳴っていて、少しうるさいくらいだ。
「…うん。やっぱりカルシファーを見て、『きれいだ』って思えなくなるのは寂しいよ。」
「待たせたな。」
掛けられた声につられて振り返る。
すると不機嫌そうな顔した魔法使いの弟子が、いつものまじないを手にしてそこに立っていた。
それからもう一度、カルシファーの方を見ると、それは元の赤い炎に戻っていた。
おうまがとき
(あれっきり、カルシファーとはしゃべっていない。)
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嘘つき、ロンリー。