新聞部部長と悪友


「出来たか?」


主語も目的語もなく、たった一言。

美術部の部室に入って来るなり、そう投げ掛けた新聞部部長にケントは思わず溜息を吐いた。

そして突然の訪問者のせいで、手を止めてしまった部員達に作業へ戻るように促す。


「ったく…他に言うことがあんだろうがよ。」


おら、と心持ち乱暴に差し出したのは一枚の絵。

だが風間は特に気にした様子もなく受け取ると、しばらくそれをじっと眺めた。


以前、新聞の挿絵に、と依頼されていたものだ。


「…まぁ、こんなもんか。」

「おいこら。」

「じゃあまた何かあったらよろしく頼む。」

「待てこら。」


人が忙しい合間を縫って、何とかかんとか仕上げた一品を「こんなもん」呼ばわりとは。

ケントの口元が小さく引き攣る。


「大体まずは礼が先だろうが。それから何でもいいから褒めろ。崇め奉れ。」

「何だそれ。」

「うっせ。金取らねぇだけありがたいと思いやがれ。」


そうぐちぐちと不平不満を吐き捨てていたケントだったが、ふと何かに気付いたような顔付きに変わった。


「あぁ、そうだ。ついでにアレ、持ってってくれよ。」

「アレ?」

「前に頼まれた…ほら、『旗を上げる少女』。」


一瞬、手にした絵を落としかけた風間。

だがケントはその様子に気付かず、「どこやったっけか…」と辺りを見渡した。


「やたら注文を付けた癖に、完成したらしたで結局載せなかっただろ?まさか捨てる訳にもいかねぇし…お、あったあった。」


近くの机の上に無造作に置かれた、数枚の内の一枚。

それに手を伸ばし、改めて眺めると、ケントは溜息を一つ吐いた。


「なかなかの出来だと思ったんだがなぁ…一体何が気に食わなかったんだか。」


ほら、と今度は心持ち丁寧に差し出されたそれ。

だが風間はすぐには受け取らず、苦虫をかみつぶしたようにそれを見つめ続けた。


「…お前、本当に知ってて描いたんじゃないだろうな…」

「あん?」






--------------
そこに描かれていたのは、お下げ髪の少女が一人。


(いらねぇの?)
(…いや、もらっておく。)


---------------
アンケートより。
リクエストありがとうございました!




戻る

嘘つき、ロンリー。