新聞部部長と旗を掲げる少女の兄
文化部部室棟カルチェラタン存続の危機を前にし、我らが北斗女史の計らいによって実現した、港南学園卒業生と在校生らの会談。
その席に妹の学友も来ると聞き、今日くらい給仕の一切は任せておけと言っておいたのだが、
「お兄ちゃんに紹介したい人がいるの。」
と早々に台所から引っ張り出された先には、少し緊張した面持ちの少年が一人。
これはまさか、あれなのか?
亡き父に代わって「娘はやれん!」的なことを言うべき流れなのか…?
「ま、松崎先輩!」
先輩、と懐かしい響きにふと我に返る。
少年の視線を受け、そして隣の海を見れば「お兄ちゃんのことでしょ」と笑われた。
え、俺?
「こちら、三年生の風間さん。」
「は、初めまして!港南学園高等部新聞部の風間俊と言います!」
「新聞部?へぇ、奇遇だな。俺も高校時代は新聞部だ。」
「知ってます!先輩の記事を何度も読ませていただきました!」
「え。」
「じゃあ私、友子さんのお手伝いしてくるね。風間さん、ゆっくりしていってください。」
「ええ?」
「ありがとう、メル!」
俺の困惑を余所に話は進み、呼び止める間もなく行ってしまった海。
紹介したい、って本当に風間くんの紹介だけ?
俺の紹介、まだなんだけど。
「えっと、改めまして、海の兄のケントです。妹がいつもお世話になってます。」
風間くんはすでに俺のことを知っているようだが、やはりここはきちんと挨拶しておくのが礼儀だろう。
というか、え?俺の記事?
よく残ってたな、そんなもの。
「あの、」
「ん?」
仲介役の海がいなくなったせいか、それまではきはきと話していた風間くんが何だか急におずおずとし始めた。
何だろうと首を傾げ、先を促すように待っていると、
「ケントさん、とお呼びしてもいいですか?」
「あぁ。松崎じゃあメルとかぶるだろうしな。」
特に何も考えず返した二つ返事に、風間くんが小さくガッツポーズしたことに俺は気付かなかった。
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(…あれ?そういやさっき、風間くんもメルって呼んでなかったか?)
(よし!一歩前進だ…!)
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嘘つき、ロンリー。