王子と大賢人
※ハイタカ成代
自分はこの人に、父の姿を重ねているのだろうか。
そう前を行く背中を見つめていると、視線を感じたのか、不意にその人は足を止めて振り向いた。
「アレン?どうかしたか?」
「っ、いえ…何でも、ないです…」
「……そうか…」
振り向き様に一瞬、目が合いそうになって慌てて顔を俯かせる。
するとその人はそれ以上何も言わず再び歩き始め、そっと息を吐き出した僕もまたそれに続いた。
偉大なる大賢人、ケント。
そんな彼が何故自分のような人間に旅の同行を認めたのか、僕には未だによく分からなかった。
『アレン、』
ただ決してそう大きくはなく強くもない、淡々と穏やかな声が、まるで道標のようにいつもそこにあって、
『アレン、』
『っ、はっ…はぁ…っ!』
『大丈夫…落ち着いて、ゆっくりと息を吐き出すんだ。』
あの恐ろしい夢の中から、僕を救い上げて、
『私を見ろ、アレン。』
「…………はい。」
小さく呟いた言葉にケントは振り向かない。
だけど、きっと、この人を。
この人だけを見ていれば、僕はもう間違えることなんてないだろう。
そう、思った。
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(正しく間違えた王子と、酷く優しい賢者の話。)
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嘘つき、ロンリー。