病弱な少年と幼馴染


手術の日程が決まって親戚の家での療養が始まった頃、幼馴染みのケントがお見舞いにやって来た。

ケントと会うのは久し振りだった。


『一人じゃタイクツだろ?これから毎日でも顔出すよ!』

『それは流石に悪いよ…でも、ありがとう。』

『別にいいって!おれ達、幼なじみだろ?』


そうケラケラ笑ってベッド脇の椅子に座ると、ケントはその日学校であった出来事や最近読んだ本の話などを楽しそうに話してくれた。

ただ、初めて訪れる場所に少し緊張していたのか、どことなく落ち着かない様子で時々部屋の中を見渡して、


『……なぁ、翔。』


窓の外。

床の上。

ドールハウス。


その視線の先には勿論、何もなかった。

だけど、最後に僕の方を振り向いたケントは目が合うと―…



『もしかしてさ、  』










「じゃあ、また学校で会おうな。」


口々に挨拶しながら同級生達が病室を出て行くのを見送り、そっと小さく息を吐き出した。

すると、どこからともなく小さな笑い声が聞こえてくる。


「お疲れさま。」

「ケント…来てたんだね。」

「声掛けるタイミングが分かんなかったんだよ。」


そう笑いながら定位置とも言える、ベッド脇の椅子に座るケント。

病室にやって来たのは今日が初めてだというのに、その視線は真っ直ぐに僕に向けられていた。


「元気になって本当に良かった。おれのお見舞いも、これで最後だなぁ…」


さいご。

ケントの言葉を口の中で繰り返し、それにつられるようにふとあの家で最後に会った時のことを思い出す。


『もしかしてさ、何か見た?』

『、え?』

『なんか翔、フインキが変わったっていうか…ここもなんか不思議な感じがするし。』

『そう、かな…』


あの時、僕は結局それを否定も肯定もせず、曖昧に笑って誤魔化した。

ケントはそれ以上何も聞かなかったけど、きっと何もかも知っていたんだと思う。


だってケントは、



『おれ達、幼なじみだろ?』



「…ケント。」

「うん?」

「あの家で僕は…小人、を見たんだ。」


そう唐突に話し出した僕に、ケントは特に驚く様子もなく、ただ「そっか」と頷いただけだった。


「仲良くなりたくて、でも上手く行かなくて、傷付けて、しまって…」

「うん。」

「やっと仲直りが出来た、と思ったら彼女は遠くに…」

「うん。」

「…内緒にして、ごめん。」

「別にいいって!『あの子』のためだったんだろ?」


やっぱり、ケントは知っていた。


そして、「翔も大人になったってことだな」と少し寂しげに笑ったケントは今も小学生の姿のまま。

もう一度「ごめん、」と静かに呟けば、僕は病室に一人だった。





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(病気のこと、両親のこと、色んなこと)
(最期まで僕のことを心配してくれた、僕の幼馴染み)


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嘘つき、ロンリー。