空賊三男と仲間
「兄ちゃん!」
一度目の呼び掛けに長男が振り返る。
「兄ちゃん!」
二度目の呼び掛けに、今度は次男が。
「兄ちゃん!」
そして三度目の呼び掛け。
それに二人が顔を見合わせて首を傾げていると、痺れを切らした三男はとうとう実力行使に打って出た。
呼び続けた相手の腕を掴む。
「なぁって!」
「…………あ?俺?」
ようやく振り向いたケントは訝しげに眉を顰めていたが無理もない。
さっきからうるせぇなぁ…と思っていれば、まさか自分が呼ばれていたなんて。
というか、
「何だよ、兄ちゃんって…俺、お前の兄貴になった覚え、ねぇんだけど。」
そうアンリの手を振り払いながら、聞き慣れない呼称に戸惑いを隠せないケント。
確かに年はアンリの少し上だが。
確かになんやかんやと面倒を見てやって、アンリにとっては『兄』と呼べなくもない存在かもしれないが。
その理屈で行くと船長を除く船内の全員が「兄ちゃん」ということになり、紛らわしいことこの上なくなるので却下だ。
「え、だってそう呼んだらケントが喜んでくれるって」
「おい、誰だ。この馬鹿に馬鹿なこと吹き込んだ馬鹿は。」
生憎そんな趣味はない。
と周囲に目を向ければ、一斉に顔ごと逸らされた。
触らぬ神に祟りなし精神か、それともまさかの全員共犯か。
後に当事者の一人はこう語る。
あの時のケントは視線で人を殺せそうだった、と。
「なぁなぁ、ケント。」
「あ?」
そして一向に名乗り出ない犯人に対し、もう連帯責任で行くかとケントが考え始めた矢先。
空気を読めなかったアンリは更なる爆弾を落とす。
「萌えなかった?」
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(……………おい、本当に誰だ。こいつにいらん知識を吹き込んだ奴。今すぐ出てこい。俺が燃やしてやる。)
(そして船内は阿鼻叫喚に包まれるのでした。合掌。)
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嘘つき、ロンリー。