鉱山少年と恋人
※映画終了後。
「……なぁ。」
「んー?」
「シータと俺、どっちが大事?」
「…へ?」
ポカンとした顔でこちらを振り向いたパズーを見て、ふと我に返る。
俺は今、無意識に何を口走った?
「っ、ごめん!何でもない!」
「あ、ケント!?」
そしてパズーが呼び止めるのにも構わず、逃げるように自分の部屋に飛び込んだ。
乱暴に閉めた扉よりもうるさい鼓動。
顔が、身体中が、熱い。
(馬鹿だ、俺…!)
ずるずるとその場に座り込めば、焦ったようなパズーの声が扉越しに聞こえる。
出掛ける準備をしていたのに、それを放り出して俺を心配してくれている。
(…本当に……馬鹿だ………)
パズーと付き合いだして早数ヵ月。
一緒に暮らし始めて、数週間。
ここ最近、パズーを仕事以外に見送ることが多くなった。
行き先は、いつも同じ。
街から少し離れた、ゴンドアの谷に住む一人の、少女。
『ケント、こっちはシータ。僕の友達…と言うより仲間?…も何か違うなぁ…?』
『ふふ。きょうだい、なんてどうかしら?』
『あぁ!それ!いいかもしれない!』
そう初めて彼女を紹介された日、自分の知らない『過去』を笑い合う二人の姿が、今も頭から離れない。
(…あの時パズーは、俺のことをちゃんと「恋人だ」って、言ってくれたんだ……シータも心から、祝福して、くれていた……)
そんな二人を疑うなんて、と自分でも本当に嫌になる。
だけど、『男同士』という負い目。
傍から見ればお似合いの、二人。
自分は、どうするべきか?
「…ねぇ、ケント。」
「!」
すぐ近くで聞こえたパズーの声に思わず肩が飛び跳ねる。
どうやら俺が座っていることに気付いたらしく、パズーも扉の向こうで身を屈めているようだ。
「もしかして、嫉妬、してくれたの?」
「…………」
「あ、間違ってたらごめん!でもそうだったら…嬉しいなぁ。」
「…………」
「あぁ!喜んでる場合じゃないよね!ごめん!君の気持ちも考えないで、僕はっ…本当にごめんっ!」
不意に落ちる、沈黙。
そしてしばらくして、「ここ、開けてくれないかな…?」と恐る恐るパズーが尋ねる。
「シータには…ちょっと相談に乗ってもらっていたんだ。僕はずっと君のことが、」
「うん。」
最後まで聞かず、パズーの言葉を遮った。
悪いのは、俺の方だ。
今はその先を聞く資格なんてない。
「俺の方こそ、ごめん。」
ちゃんと笑って見送らなければ。
そう自分に言い聞かせ、俺はようやく扉に手を掛けた。
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(そして開いた扉の向こうでパズーが持っていたそれを見て、少し泣きそうになってしまうのだった)
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嘘つき、ロンリー。