鉱山少年と空賊船医


「いって!いってっっ!!」

「いいから大人しくしろ。」


扉を開けた瞬間、聞こえてきた悲鳴にパズーは思わず足を止めた。

が、次の瞬間にはドンッと背中を押され、その勢いに負けて一歩踏み込んでしまう。


慌てて振り返るも、扉は無情にも閉ざされた後だった。


(え?え?)


機関部での作業中、「忘れてた」と戻ってきたルイにより連れ出されたのはつい数分前。

確か、船医室へ案内する、という話だったのだが。


「全く、お前達はいつもいつも…貴重な薬品を何だと思っているんだ…おら、終わったぞ。」

「いっ!?」


恐らくルイが話していた「ケント先生」だろう、男はアンリの頬にガーゼを貼ると最後にそれを叩いた。

その下には勿論、何かしらの怪我があるはずで、ついその痛みを想像してしまったパズーはアンリにつられるように顔を歪めた。


「さぁ、さっさと持ち場に戻れ。あぁ、それとルイにも後でちゃんと来るように言っておけ。」

「うぅ…はぁい…」


まるで犬でも追い払うようにシッシと手を振られ、頬を押さえながら立ち上がるアンリ。

そこで初めてパズーの存在に気付いたらしく、一瞬目が合うと、その顔に同情の色を浮かべた。


(え?)


「…あれじゃ、ドーラが嘆くのも無理はないな。」


再び扉が閉ざされるのを見届けることなく、背を向けたケントが溜め息混じりにぽつりと呟く。


「『仕事』中の負傷ならともかく、怪我の大半は船員同士、しかも兄弟喧嘩が原因だと言うんだからやってられんよ。」


そして紙に何かを書き付けながら、振り向くことなく「新入りか」と問い掛けた。


「ケント先生」の、診察。

パズーは反射的に身構え、


「どうだ?ここでの生活は上手くやっていけそうか?」

「え、あ、いや…」

「無理せんでいい。」


思いがけず柔らかい声に戸惑ってしまった。


「お前さんはまだ若いんだ。頃合いを見て、いつでも『彼女』と一緒に船を降りられるように準備だけはしておいた方がいい。」


不意にケントの手が止まり、ようやく振り返る。

いつまで経っても返事がないのを不審に思ったのか、「分かったのか?」と念を押すケントに慌てて頷くパズー。


その瞬間、ケントは小さく、だが確かに笑ったのだった。





年長者の助言

(無駄な怪我だけはしてくれるなよ。)


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七周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。