空賊三男と空賊船医
「最近、夢見が悪くてな…」
よく眠れんのだ、とぼやく声は珍しく弱々しい。
だが次の瞬間、ハラ・モトロの口から『タイガーモス号』の名が出ると、ケントはそれ以上詳しく聞くのを止めた。
ただただ小さく苦笑する。
「年のせい、というより職業病だな…一日中機関室にいるからだろう。今度、よく眠れるお茶でも用意しておくよ。」
「出来れば酒にしてくれんか。」
「却下だ。」
最後に簡単にカルテへと書き付け、定期検診を終える。
そしてファイルを閉じて向き直れば、勝手を知るハラ・モトロもすでに帰り支度を始めていた。
「お前さんはどうだ?」
「ん?」
「何かそういう夢を見たりせんのか?」
「…そうだな。何度か見たことがあるにはある。」
「ほう?例えば?」
「例えば、あれだ。今までで一番何が恐ろしかったかと言えば―…」
ハラ・モトロが部屋を出て行ってしばらく、入れ替わるように顔を覗かせたのはアンリだった。
「どうした?」
「えっと…メシ、持ってきたんだけど…」
「あぁ、もうそんな時間か。そこに置いておいてくれ。」
そう言って入口脇にある台を指し示したものの、そこにトレイを置いた後もアンリは一向に立ち去る素振りを見せない。
それに、どこか少し様子がおかしいことに気が付いた。
「アンリ?」
「じ、じっちゃんと、さっき何の話してたの…?」
「何って…」
特に大した話は…と言いかけ、口をつぐむ。
もしかしたら、すれ違い様のハラ・モトロの顔がよほど暗く見えたのかもしれない。
そしてアンリなりに心配しているのだろう。
となると、ここで自分が「何でもない」と言ったところで、この男は信じるだろうか?
むしろあれこれ妄想を掻き立て、すぐにありもしない事実が船内を駆け巡りやしないだろうか?
何と言うべきかケントが迷っている間、アンリも何かを考え込み、そしてケントより先に辿り着いてしまった。
「…分かった!俺、協力する!」
「協力?」
弟子入りでもして負担を減らそうというのか。
しかしこの三男坊に大事な機関室を任せるというのも、それはそれで不安になる。
いや、だからこそ逆に、あのモグラに「自分がしっかりせねば」という意識を、
「任せて、パパ!」
「パ………は?」
問い返す間を与えることなく、部屋を出て行くアンリ。
呆気に取られたケントはそれを見送ってしまった。
「……あいつ、何か寝惚けているんじゃないか?」
頬をつねると効果的
アンリが何を勘違いしたのか、それをケントが知るのはもう少し後の話。
そしてその頃、船内はケントが想像する以上の騒動となるのだった。
(今までで一番何が恐ろしかったかと言えば、ドーラと結婚する夢だな。)
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プチ☆夏フリリク企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。