姫の師と谷の守人


旅に出る。

そう伝えた瞬間、一拍の空白が生まれた。


「…まぁ、そんな気はしていたさ。」


だが、すぐに返された苦笑。

それもまるで何かをごまかすようだった、など自分に都合の良い解釈だろうか。


「大ばば様の言う通り、それがお前の定めなんだろうよ。」

「ケント…」

「なに、後の事は心配するな。俺もやる時はやる男だ。任せておけ。」

「…あぁ、そうだな。」


その後も名残を惜しむかのようにたわいもない話を続け、言い訳のように次の風を、また次の風を待った。



「それじゃあ気を付けて行ってこい、ユパ。旅の話、楽しみにしてるぞ。」

「ケントも、息災でな。」



共に来て欲しい、とは最後まで言い出せなかった。




谷を守る。

それが、ケントの定めだった。





--------------
待っている。
待っていてくれ。

それすら口に出せぬは、結ばれぬさだめと知っているから。


(運命に振り回された、二人の男)



戻る

嘘つき、ロンリー。