空軍少佐と猫
「まったく…何を考えているんだ、お前は。」
『こんなこと』を許したジーナもジーナだ。
そう頭を抱え、溜息をこぼせば、クスクスと小さな笑い声が聞こえて来る。
「何で?私、上手だったでしょう?」
俺の顔を覗き込むように首を傾げるのは、今宵ホテル・アドリアーノの歌姫を務めた『女』。
サラサラと長く美しい髪が流れ落ち、ふわっと一瞬香水が香る。
それらを振り払うように、乱暴に頭を振った。
「止めろ、ケント。いい加減にしないと俺も怒るぞ。」
「ははっ!もう怒ってる癖に。」
もう何度目になるか分からないやり取り。
勿論、ケントに反省する様子はない。
未だウィッグも外さずに笑っているのがいい証拠だろう。
「…もういい。」
ケントは危機感というものが足りない。
つい数分前、壇上から降りた際に近くの客に捕まり、数々の賛美と共にその手の甲へ、
「フェラーリン?」
思い出しただけでまた腹が立ってきた。
呼ばれた名に返事もせず、「お前はどれだけ心配させれば気が済むんだ…」と吐き捨てる。
そして顔を背けたものの、すぐケントの方から伸ばされた両手に引き戻されてしまった。
徐々に近付く、顔と顔。
「心配で心配で、」
俺から目が離せないだろ?ご主人様。
そうにんまりと笑って、ケントは口づけを一つ落とした。
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豚はそれを“猫”と呼んだ。
だが生憎それは、そんな可愛いものではなかった。
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嘘つき、ロンリー。