空軍少佐と猫
気まぐれで、好奇心旺盛。
それでいて淡白。
思い出したようにじゃれついては興味をなくしてそっぽを向く、その姿は正に『猫』そのものだと、いつだったか豚が笑っていた。
なんて、ふと思い出したそんな話を何となく口にすれば、小さな笑い声が降り注ぐ。
「俺が猫なら、お前は犬だな。」
ソファーに横たわる身体の上に乗り上げてきた『猫』。
腹の辺りに跨がって、フェラーリンを見下ろすケントはひどく愉しげだ。
「犬?」
「そう、軍の犬。」
伸びてきた手が乱暴に頭を掻き撫で、そして次の瞬間には目の下をなぞるように優しく触れる。
それは皮肉めいた言葉だったが、ケントの声音に揶揄以上のものは感じられない。
だからされるがまま、ケントの好きなようにさせながら目を細めるフェラーリンは本当に犬になった気分だった。
「昨日はあまり寝かせてもらえなかったのかな?軍人さん。」
隈でも出来ていたのだろう。
少し疲れた顔をしている、と言いながらケントが顔を寄せる。
それから熱を計るように額同士を重ね、鼻先が触れ合い、もう少しで、
「別に無理して今日、会いに来なくても良かったのに。久し振りの休みだったんだろ?」
フェラーリンが目を閉じるより先に、ケントはあっさりと身を引いた。
温もりが遠ざかっていく。
「……前々から約束していただろう。次の休みの日には、」
「俺の部屋で一緒に過ごす、か?律儀だな。それくらい断ったところで怒りはしないさ。」
「………お前は、俺に会いたくなかったのか?」
後を追うようにして伸ばしたフェラーリンの手をすり抜け、「まさか、」とケントが笑う。
その瞬間、フェラーリンの脳裏に過ったのは、興味をなくしてそっぽを向く一匹の『猫』の姿。
「今、毛布を持ってくるから、今日はゆっくり寝てっ」
多分ケントの言う通り、今日の自分は疲れている。
犬のように撫でられ、久し振りに感じる温もりに思わず微睡みかけたぐらいだ。
このまま眠れたら、どんなに気持ちのいいことだろう。
「…フェラーリン?」
だから自分の身体の上から降りようとするケントを腕の中に閉じ込め、不思議そうに呼び掛ける声を子守唄に、フェラーリンはそっと目を閉じた。
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(だって動物だもの、)
(自分の欲に忠実なのです)
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嘘つき、ロンリー。