空軍少佐と同期
違和感、のようなものは確かにあった。
具体的に何が、と問われたら困るような、ただ漠然とした感覚。
もしかしたら長年飛行艇乗りとしてやってきた己の勘だったのかもしれない。
じゃあ何故、それを「気のせい」の一言で済ませてしまったのか?
それは自身の勘より、長年の付き合いである整備士を信じた結果だった。
「馬鹿か、お前は。」
一度だけ顔を見せたポルコ・ロッソはただそう一言だけ吐き捨て、見舞いに来たくせに見舞いの品も置かずに帰っていった。
しかし、あの皮肉屋の豚が皮肉も言わずシンプルな罵声に留めた辺り、色々と思うところがあったのだろう。
と、フォローを入れたのはその次に訪れたマダム・ジーナだった。
「でも本当、貴方って馬鹿ね。」
華やかな花束を持って現れた彼女は流石女性、不覚にも感動して少し泣きそうになった。
人間、弱っているところを優しくされると脆いものだ。
しかし、明日にも退院出来そうな比較的軽傷の身で花束など、少々大袈裟ではないだろうか。
と、疑問を口にしたのは入れ替わるようにやって来たフェラーリン少佐だった。
「いや、お前も人のことは言えないだろ。」
「そうか?」
俺の指摘を軽く聞き流した奴の手は今、シャリシャリと器用にリンゴの皮を剥いている。
見舞いに果物というのも大袈裟だが、そもそも怪我したのは足なので自分で皮を剥くのに支障はない。
むしろ軍服姿でリンゴを剥く様子が違和感で仕方ないのだが。
「しかし…本当に馬鹿だ、貴様は。」
そんな三度目の罵りと共に差し出されたリンゴ。
一瞬躊躇ってしまったのは、別に直接口元に寄越されたからではない。
誰だって、ナイフに刺ったリンゴを前にすれば二の足を踏むだろう。
と、しばらく待ってみたものの、一向に引く様子を見せないフェラーリンは果たして素なのか、それとも何か俺が怒らせてしまったのか。
「ケント?どうした、食べないのか?」
促されてようやく、意を決して口を開く。
その次の瞬間、病室の扉が開いた。
期待を裏切らない
「!?おおおお邪魔しましたっ!!」
実は、今回に限って俺の機体をイジっていたのは新米の整備士だったらしい。
と、後から教えてくれたのは長年の付き合いである整備士だった。
----------------
六周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
戻る
嘘つき、ロンリー。