紅豚と後輩
自分は何か、怒らせてしまったのだろうか。
いや、もしかしたら端から嫌われていたのかもしれない。
軍を辞め、賞金稼ぎへと転向した先輩の活躍を耳にする度に落ち込む俺に、もう一人の先輩はいつも呆れていた。
「胸を張れ、ケント。豚のことなんて気にするな。」
今の『エース』はお前だ、なんて。
きっと慰めだろうその言葉は逆効果だった。
俺に飛行艇乗りとしてのいろはを教えたのは、あの人だ。
『二代目エース』などと持て囃されたところで、あの人が認めてくれなければ意味がない。
それなのに、
『明日、先輩を驚かせてみせますよ。』
円満、とは言い難い辞め方に大っぴらな見送りは禁じられていた。
だからせめて、先輩が軍を去る日には愛機を飛ばそうと、最後に自身の成長を見てもらおうと思っていた。
餞の、つもりだった。
『…馬鹿なことを教えちまったもんだぜ。』
そうして、ようやく物にしたひねりこみは誰にも見せないまま、永遠に披露する機会を失った。
「ケント。」
名前を呼ばれ、ふと我に返る。
顔を上げ、俺と目が合うと、フェラーリン少佐は溜め息を吐いて仕方なさそうに口を開いた。
「今夜、ジーナの店に行ってみろ。」
「、えっ?」
「…少しは気が紛れるだろう。」
この真面目な先輩が酒を勧めるとは、よほど自分はひどい顔をしていたに違いない。
それが申し訳なくて、「じゃあ一杯奢らせてください」と言えば、また溜め息を吐かれてしまった。
「それはまた今度だ。」
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(いっそ付いて行けば、連れて行けば良かったものを)
(まったく、世話の焼ける奴らだ)
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嘘つき、ロンリー。