美しき歌姫と軍の秘蔵っ子
※豚、軍在籍中。
「―…出来ると思ったからやった、ただそれだけのことじゃないですか。」
それの何が問題なのか、俺にはさっぱり分かりませんね。
そう悪びれた様子もなく、肩を竦めるケントの頭には何重にも巻かれた包帯。
これは確かに骨が折れそうだと、マルコは大きく溜め息を吐き出した。
「問題も何もお前、現に怪我してるじゃねぇか。」
「この程度なら想定の範囲内です。」
「…………」
「そもそも貴方が言ったことでしょう?『教科書通りにやるな』、『臨機応変に対応しろ』。自分は言われた通りにやったまでです。」
操縦桿を握っている間は一欠片も思い出さなかった癖に、白々しくも今それを盾にするケントにいっそ感心してしまいそうになる。
本来こういう教育係というものは生真面目な性格の、例えば同期の中で言えばフェラーリン辺りの役目だろう。
実際、これまでそれを務めていたのはマルコではない、別の人間だった。
それがつい先日、とうとう根を上げたために今回、そのお鉢がマルコに回ってきた訳だが。
「マルコ先輩、少し神経質になりすぎてやしませんか。」
ここは『最終手段』を使うしかないらしい。
いや、元々『それ』を使うつもりで今夜はケントと二人、ここを訪れたのだ。
マルコは一、二度、指先でテーブルを叩いた後、小さく息を吸った。
「ジーナ。」
「っ…」
それまで平然と構えていたケントの肩が、ビクッと揺れる。
その視線も一瞬さ迷い、それから恐る恐るマルコから隣へ、静かに事の成り行きを見守っていた歌姫に移された。
「次からは気を付けなさいね、ケント。」
「……はい。」
そしてぼそっと小さく返された返事にマルコは鼻を鳴らし、ジーナは優しく微笑むのだった。
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(ふふっ、素直ないい子じゃない。)
(あぁ、全くだ。)
(………卑怯ですよ、先輩。)
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嘘つき、ロンリー。