楽器職人見習いと読書仲間


んーんーんーんんんんー








「痛っ」


気持ち良く鼻歌を歌っていると、何かが後頭部に直撃した。

振り向けば、不機嫌面の同級生。


「…何するんだよ、いきなり。」

「別に。」

「いや、「別に」じゃないだろ。」


とりあえず一言謝れよ、と睨んだものの素知らぬフリを決め込む天沢。

しれっと俺の前の席に腰を下ろした奴の手には丸めたノートがあった。

恐らくそれが、先程俺を襲った凶器だと思われる。


「ってそれ、俺のじゃないか!」

「あぁ、担任から預かってきた。」

「なら普通に渡せ!人様のノートを丸めるな、こら!」


可哀相なノートを天沢の手から奪い返し、机の上で押し伸ばしてやるが、誰の目から見てもすでにうっすらU字型に曲がってしまっていた。


いや、V字か?


「くそ…変な形が付いてる…」


天沢から謝罪の言葉は一向に聞こえて来ない。

イラッとして、もう一度睨みつけてやれば睨み返された。


理不尽すぎる。


「…まじ何だ、お前。」
 

「別に。」

「………」


不毛なやり取りに見切りを付け、黙ってノートを机の中に仕舞った。

さすが俺、大人な対応。


(…そういやここ最近、機嫌良さ気だったのにな…)


いつの間にか本を読み始めていた天沢に倣って、俺も読み掛けの小説を取り出した。

昼休みはまだ充分にある。


このペースなら読み終わるな、なんて思った矢先。



「………んーんーんーんんんんぶっ!?」



今度は真正面から攻撃を受けた。




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(っ、何だ!俺の鼻歌がそんなに気に食わないのか!)
(何でその選曲なんだ…)


いつか保健室の前を通りがかった時に聴いたその曲は、どうやら友人のカンに障ったようです。



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嘘つき、ロンリー。