楽器職人見習いと同級生


がしゃん!







「お?」


何やら背後で物凄い音がした。


「……天沢?」


反射的に振り向くと、そこには倒れた自転車と同級生がいた。

足早に近付き、自力で立ち上がろうとする天沢に手を差し延べる。


「大丈夫か?」

「っ…あぁ……」


俺の言葉に肯定したものの、天沢の表情は少し険しい。

それに一向に俺の手を取ろうともしない。


ぱっと見、擦り傷などはないが、どこか捻っているようだ。


「無理すんなよ。どっか痛いんじゃねぇの?」


そう天沢に声を掛け、辺りを見渡した。

誰か知り合いの一人でもいれば手を貸してもらって、


「っ、大丈夫だ…っ」

「あ、おい。止めとけって。」


少し目を離した隙に何とか自転車を立たせ、自分も立ち上がろうとする天沢。

いくら宥めても「大丈夫」の一点張りだ。


「…しょうがねぇなぁ…」


苦笑しながら、天沢から自転車のハンドルを奪う。

ぱっと見、こちらも壊れたところはなさそうだ。


「おい…?」

「送ってってやっから。後ろに乗れよ。」


反論は認めないとばかりに先にサドルを跨げば、一瞬驚いた天沢がすぐに抗議の声を上げる。

だが、しばらく「いいからいいから」と繰り返せば、天沢は無駄だと悟ったのかよほど重傷だったのか、渋々後部席に座った。


「うっし。んじゃ、しっかり掴まっとけよ。」

「…お前、どこか行くところだったんじゃないのか?」

「ん?俺は野球部の練習試合を応援した帰りだけど…あ、もしかしてどっか行くとこだったか?」

「…いや…」


少し言葉を濁した天沢に不思議に思ったが、その手がちゃんと腰に回されたので気にしないことにした。


「んじゃあ、しゅっぱーつ。」


ペダルを漕ぎ出せば、二人分の重さを感じる。

下り坂なので、そう大変でもないが。


(……あれ?)


綺麗に整地された、緩やかな坂道。

すぐ横の車道を車が通った様子はなく、俺と天沢以外誰もいなかった。


(じゃあ天沢は何でコケたんだ?)


一瞬そんな疑問が脳裏を過ぎったが、それより手当てが先だ。

「…次、右」と後ろから指示する天沢が、その手に少し力を入れた気がした。




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見とれていたなんて、口が裂けても言えない。


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。