若猪神と友


※猪神主。










優しい奴だった。

争いを嫌う、奴だった。



『ケント…俺はもう、我慢出来ない…』



「ナゴ…ナゴ…!」


もはや自分の声は届いていないだろう。

そう思いながらも追走し、その名を呼び続ける己を誰かが笑った気がした。



『一緒に、来てくれるか…?』

『…当たり前だろう。』



(嗚呼、何故あの時止めなかった?)


嫌な予感は確かにあった。

だが若さ故の過信が、判断を狂わせてしまったのだ。


「ナゴ…ナゴ…!」


応える声はなく、呼び返される名前もない。

それにもう、何も見えていないだろう。


前(さき)の戦と長くに渡る追走のせいで足がもつれかける。


「っ、待て…!」


そしてその瞬間を、俺は見てしまった。


「いやだ…やめろ…やめてくれ…っ!」



ナゴの守が、タタリ神になる瞬間を。



「――――――!!」



薄れいく意識の中、俺が最後に発したのは友の名か、それともただの獣の咆哮だったか。



思わず、自嘲した。





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行くな
行くな

独りで、逝くな



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嘘つき、ロンリー。