東の青年と青年
※アシタカ←カヤ←主←アシタカ
視界の端に見慣れた姿を見つけ、その瞬間集中が途切れてしまった。
的を大きく外した矢はそのまま地面へと落ちる。
「っ…くそ…」
元より苦手な弓矢。
一気にやる気が削がれ、乱暴に頭を掻き毟る。
そしてもう一度、その姿を視界に入れて後悔した。
(……カヤ…)
一心にどこかを見つめる横顔。
その視線の先など、見ずとも分かる。
苦虫を噛み潰した気分だ。
(さっさと結ばれてしまえばいいものを…)
このまま続けても身が入りそうにない。
落ちた矢を拾い上げ、もうこの辺りで切り上げてしまおうかと思った。
その瞬間。
「ケント。」
「っ…!」
掛けられた声に思わず矢を取り落とす。
何故、ここに?
ぐるぐる頭の中を巡る疑問と共に、どこからかカヤの視線を感じていた。
「すまない…驚かせてしまったか?」
「……いえ。ところで何か?」
一呼吸置いて心を鎮め、改めて矢を手に取る。
震える指先に気付かれなかっただろうか。
「久しぶりに遠乗りにでもと思ったんだが」
「申し訳ありません。まだ鍛練が残っています故。」
「…そうか。」
「カヤでもお誘いしたらどうでしょう?」
自分でそう言っておきながら胸が痛んだ。
それをごまかすように矢を構え、無理矢理会話を打ち切る。
そんな俺の不実な態度を責めることなく、アシタカ様は「あまり根詰めるな」とだけ言い残して立ち去った。
その優しさに小さく舌打ちする。
最初から最後まで交わることがなかった視線。
だが的を真剣に見つめる横顔は凛々しく、そして何より美しかった。
(早いものだな…)
自分を「あにうえ」と呼び、その後を追ってきた子どもはもういない。
「……ケント…」
名前だけ小さく呟いて、その想いを奥深くに閉じ込めた。
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少年は少女に恋をしておりました。
少女は青年を慕っておりました。
そして青年は―…
あぁ、なんて報われない話!
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嘘つき、ロンリー。