山犬の姫と姫兄様
※トリップ(風の谷→もののけ)
※姫姉様成り代わり♂
「『もののけ姫』なんて、上手いことを言うね。」
人里で私がそう呼ばれるのを聞いたのだろう。
からかわれたような気がしてそっぽを向くと、隣でケントが苦笑するのが聞こえた。
「いや俺もさ、谷では『姫兄様』なんて呼ばれていたんだよ。」
「姫、兄様?」
「そう。男なのにおかしいだろ?」
そう言って穏やかに微笑むケントはあまり雄の匂いがしない。
だからその呼び名のどこがおかしいのか、私にはよく分からなかった。
(…私も、兄と呼んでいいだろうか……)
ある日突然、この森に現れたケント。
奇妙な出で立ちをしていて、奇妙な笛で荒ぶる獣達を宥めて、そして奇妙な翼で空を舞った。
『…ここは、いいな。空気が澄んでいる。』
その姿はまるで大きな鳥のようで、人里では『鳥子』なんて呼ばれていることをケントは知らないだろう。
(……人間は嫌いだ。でもケントは、)
「さぁ、姫。お手をどうぞ。」
いたずらっぽく差し出された手。
脳裏を過ぎるのは、いつか見た少し寂しげな顔。
『でもここには、蟲達がいない。』
ずっとここに居ればいいのに、と言葉にはせず、私はその手に自分の手を重ねた。
--------------
(とりご)
(とりのこ)
(あなたの、とりこ)
---------------
リクエストありがとうございました!
戻る
嘘つき、ロンリー。