東の青年と乙女の兄01


刀や弓、組み手に駆け比べ。

これまで様々な勝負を挑んできたが、そのどれもが後一歩及ばず敗退を繰り返してきた。


そして今日もまた乗馬で負けてしまい、「選んだアカシシが悪い!」と足掻いた挙げ句、相棒を交代してなお負けた。

敗因の責任を押し付けた相棒からは、頭突きを喰らった。


「ぐ…っ!」

「大丈夫か、ケント?怪我は?」

「な、情けはいらん…!」


頭を抱え、蹲る俺を気遣わしげに覗き込むアシタカ。

敗者に労りの言葉を掛けるこの余裕が、村の乙女達を尽く魅了する所以だろうか。


だが俺にだってそれくらいの余裕はあるぞ!

相手がアシタカでなければの話だが!


「ところでケント、約束は覚えているか?」

「あ…?」


ようやく痛みも引いてきたところを見計らい、アシタカがそう尋ねてきた。

どうでもいいが、いつまで俺の頭を撫でてやがる。止めろ。


(約束…約束…?…あ、)


『たまには趣向を変えてみないか?』


そう言えば始める前、確かにそんな話をした。

勝負事に趣向も何もねぇだろ、と言いたかったが、毎度無理矢理付き合わせているのを考えると無下にも出来ず、了承したのだった。


「あー…負けた方が勝った方の言うことを聞くんだったか?」

「そうだ。」


カヤを嫁に、と言うなら当然即却下だ。

それとももしや、「これ以上付き纏うな」とでも言うつもりか。


(…その時は仕方ない。ほとぼりが冷めるまでは大人しく、)


「今日一日だけでいい。私と添い遂げてはくれないか?」

「…………は?」






「おぉ、珍しいな…ケントがアシタカの前を走っているぞ。」

「いや、あの様子だと駆け比べではなく鬼事でもしておるのだろう。」

「何だ。ケントもようやく、一つは勝てるようになったかと思えば。」

「本当に懲りないのぉ…」





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そしてその後しばらくの間、ケントがアシタカに突っ掛かっていくことはなかった。


(アシタカぁっ!この前はよくもからかいやがったなっ!)
(では、今度は何をしようか。)


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嘘つき、ロンリー。