山犬の長とその子らと背の君


ぐわっとその大きな口が開いた瞬間、何が面白いのか、中を覗き込んだ末の娘。

その姿を見て、何となく嫌な予感はしていた。


「ふぁああ…んぐっ?」


ただの欠伸なのだから、開いたら閉まるのが当たり前。

そして閉じられたケントの口の中から聞こえてきた歓声に、慌てたのは息子達だった。












「いやぁ、すまんすまん。小さいから気付かなかったよ。」


必死に妹の名を呼びながら耳や頬に噛み付いてくる息子達に、ようやくそれに気が付いたケントはすぐにサンを解放した。

だが、あまり悪びれた様子もなく笑う父親に、息子達の視線はどこか冷たい。


それだけ肝を冷やされたのだろう。

当のサンは事の重大さに気付いておらず、ただ一人楽しげに笑っていた。


「まったく…サンはまだ何もよく分かっちゃいないんだ。あんたがしっかりしないでどうするんだい。」

「だから悪かったって…ほら、サン。こっちにおいで。綺麗にしてあげよう。」


そう言って素直に側までやってきたサンに頬を寄せ、自身の毛皮で唾液を拭うケント。

それさえも遊んでいるように感じるのか、ますますサンの声は甲高いものへと変わり、徐々に兄達もそわそわと落ち着かなくなっていく。


何だかんだ言っても、やはりまだまだ子ども。

不機嫌はあまり長続きせず、今ではもうすっかり自分達の順番を待って尻尾を振っていた。


だが、


「しかし、サンは本当に小さくて可愛いなぁ。」


食べてしまいたいくらいだ、と。

ケントがそう笑った瞬間、ぶんぶんと振られていた尻尾がびしっと止まる。


そしてサンが不思議そうに首を傾げる間もなく、二頭は妹を父の手の中から奪い去り、駆けて行くのだった。





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(ん?どうしたんだ、一体。)
(…あんたが言うと冗談に聞こえないんだよ。)


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嘘つき、ロンリー。