河神様とある人柱の話

史話


「…いつの時代も、子どもってのは危なっかしくて見ていられないな。」


毎度の事ながら本当、肝を冷やすよ。


そう苦笑する青年の視線の先で、川に落ちた少女が引き上げられる。

ひどく咳き込んではいるが水を飲んでいる様子はなく、見た目にもさほど怪我はない。


人々が安堵の息を吐くと同時に泣き声が上がる。


「よほど怖かったんだろう…でもきっと、あの子はその内、今日のことを忘れてしまうんだ。」


苦笑が自嘲に変わる。


「こういうことは周りの人間の方が覚えているものなんだろうよ。」

「…ケント…」

「なぁ、俺の時はどうだった?」


そう言って振り返った青年も、その振り返った先にいた少年も、どこか古めかしい格好をしていた。

誰も彼らの姿を見咎めることはない。


ただ少女の視線が一瞬、そちらへ向けられた気がする。


「どうして俺は助けてくれなかったんだ?」

「っ…」


「答えろよ、神さま。」


問う方も問われる方も、どこか泣きそうな顔をしていた。




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とても心優しい神様のいる川で、一人だけ、その恩情を受けられなかった男がいた。


(彼の名前は、ひとばしら)
(情ではなく愛を受けた者)

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嘘つき、ロンリー。