河神様とある人柱の話

神話


「早く行きなよ、神さま。」


もう、ここにはいられないんだろう?


そう独り言のように問い掛けた青年の視線の先で、川の埋め立て工事が始まる。


次々と景色が移り変わりゆく中、その様子をぼんやりと眺める青年の姿だけがいつまでも変わらなかった。


傍らには誰もいない。


「……あんたが消えても、俺はずっとこのままなんだな…」


ふと傍らの小さな社へ視線を動かし、青年は小さく息を吐いた。


「墓を祠と間違えるなんて、とんだ間抜けもいたもんだ。」


事実が正しく伝承されぬほど、長い長い年月が過ぎた。

その年月がかの身を土地に縛り付け、そしてそれ以上に途方もない時間がこれから青年の上を通り過ぎていく。


(ケント…)


神が神であったがために『彼』は救われなかった。

だが、神が神でなくなったがために『彼』は報われない。


(……必ず、戻って来る。)


風が青年の頬を撫でる。



(決してそなたを独りにはしない。)



その音が何かの囁きのように聞こえ、青年は目を細めてわらった。



「まるでかみさまみたいだな。」



そして青年は、本当にひとりになった。




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ささやかで傲慢。
手遅れの、愛の言葉。


(返事も聞いてはもらえぬのですね)




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嘘つき、ロンリー。