魅上と幼馴染


※夢殿学園祭その後。







ベッドの上に横たわり、ゲームをしていると、不意にノックする音が聴こえた。

身体を起こして視線を部屋のドアの方…ではなく、反対方向の窓へと向ける。


残念ながら、俺の家族にノックなんてマナーを守る人間はいない。俺も含めて。


そして少し考えた俺はベッドを下りて窓に近付き、カーテンを開いた。


そこにいたのは、予想通りの、予想外の姿。


「明くん?」


隣の家に住む、少し年上の、所謂幼馴染み。

昔はよく勉強を教えてもらったりもしていたが、もう随分と長い間交流しておらず、窓を開けると同時に流れ込んできた香水の匂いがそれを実感させる。


「こんばんは、玄兎くん。久し振り。」

「久し振り…」

「夜遅くにごめんね。少しお邪魔してもいいかな?」

「いいけど…派手にやったね。」

「あぁ、聞こえてたかい?」


恥ずかしいな、と部屋に上がりながら苦笑する明くんが言っているのは多分、つい数分前まで隣の家から聞こえてきていた怒鳴り声のことだろう。

確かに初めて聞くそれらに驚きもしたが、俺が言ったのはそちらではなく。


「おじさんが手を上げるなんて意外だった。」


俺の言葉にきょとんと目を瞬かせる明くんの顔はガーゼだらけで、少し血が滲んでいる箇所もあり、見ていて本当に痛々しい。

よほどスゴい親子喧嘩だったに違いない。


と、眉を顰めた俺を見て明くんはようやくそれに気付いたらしい。


「あ、いや、これは違うんだ。」

「違う?」


まさか、殴ったのはおばさんの方なのだろうか?どっちにしろ、意外すぎる。


「ちょっと色々あってね…大学を辞めることにしたんだ。医者にも、ならない。」

「…そっか。」

「ある人に言われてね、なりたい自分になればいいって。」


簡単、だけどその言葉はきっと明くんにとって、ずっと誰かに言われたかったものなんだろう。

久し振りに再会した俺でもそう分かるほど、明くんの表情は明るくて清々しい。


一介の高校生である俺に何が出来るとも思わないが、昔勉強を教わった恩があるので応援はしたい。


そもそも喧嘩の後で家に居づらくなったから、明くんは俺のところに来たのだ。多分。
ならば灯台もと暗し、ほとぼりが冷めるまで家に匿うぐらいは―…


「だから、玄兎くん。」

「うん?」

「結婚を前提にボクと付き合ってくれないか?」

「……んん?」





要、進路相談。

(ごめん、今何の話してたっけ?)


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こっそり悪男祭より。


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嘘つき、ロンリー。