島袋と協栄生
面倒くさい同級生に面倒くさい絡まれ方をして面倒くさくなった俺は、つい衝動的にそれをボコボコにしてしまった。
結果、ますます面倒くさい状況に陥ることになった。
実は「件の同級生をボコボコにする」ということは、「協栄の次期番格を担う」ということと同義だったらしい。
そんな大層なやつには見えなかったが…と首を傾げていると、「とにかく一回赤城さんに挨拶してこい」と周囲より無理矢理送り出された俺は今、井の頭公園にある某たこ焼き屋台に来ている訳だが。
「おい、玄兎。俺の話、ちゃんと聞いてんのか?」
「…ちゃんと聞いてますよ。」
一瞬返事に間が空いたのがまずかったのか、オウム返しで返したのがダメだったのか、訝しげな視線を向けられる。
負けじともう一度「聞いてますって」と繰り返せば、あまり納得してない表情をしながらも話の続きをし始める島袋さん。
話のテーマは『「番長」とは何か?』『「男」とは何か?』―…
(……というか俺、何で説教されてんの?)
しかも、協栄OBだという赤城さんが相手ならともかく、この人米商だろ?
説教なら、さっきから斜め後方から俺を睨み付けてくる同校の後輩にしてやれよ、と言ってやりたい。
ちなみに赤城さんからは「俺は引退した身だからおまえのやることに首は突っ込まない」と言われたので、「俺も番長になるつもりないので不良界隈に首を突っ込みません」と答えておいた。
と思い返してみれば、その辺りから島袋さんが説教モードに突入したような気がする。
『いいか?番長ってのはな、そいつが「なりたい」と言ったからってなれるものじゃあねぇんだ。その逆もまた然り、「なりたくない」からってならずに済むものでもねぇ。』
それが本当なら、なんて面倒くさい話なんだ。迷惑すぎる。
大体最初に番長制度なんて考えたやつ、誰だよ。前出てこいよ。
と、再びあの暴力的な衝動に駆られそうになった俺だったが、ふと聴こえてきた笑い声に我に返った。
見れば向こうの方から帝拳らしき集団がこちらに向かって歩いてくる。
島袋さんの意識も、ようやく俺から外される。
「かっかっかっ!年寄りの説教は若者に嫌われんぞ?」
「何だとぉ!?」
そして突然始まった取っ組み合いの喧嘩に、俺はもう帰ってもいいだろうか?と空を仰いだ。
(…いいや、もう。帰ろう。)
「それじゃ、赤城さん。俺はこの辺で失礼しますんで。」
「おう、お疲れさん。」
とにかく一回赤城さんに挨拶する、という義務はこれで果たしたのだ。誰も文句はあるまい。
当の赤城さんだって俺を引き留めようとはせず、ただ乱闘中の連中に向かって「おい!店の前で暴れるんじゃねぇ!」と声を荒げただけだった。
一瞬八尋とも目が合ったが、やっぱり睨み付けられるだけで特に何も―…
「てめー、玄兎!俺の話はまだ終わってねぇからな!明日もここに来いっ!」
「………はぁ…」
結局、翌日も話の途中で喧嘩が始まってしまい、さらに説教が延長されるのはまた別の話だ。
(…というかこの人たち、本当仲良いよな。)
面倒くさい人たち
(西沢をボコボコにしたら本当、面倒くさいことになった)
(なので今度改めてもう一度、お礼を兼ねてボコボコにしてやろうと思う今日この頃)
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こっそり悪男祭より。
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嘘つき、ロンリー。