遊佐と極道


※死ネタ注意。








「あ?何だこいつ、施設に入れたんじゃなかったのか?」


ドクのところで何度か見たことあるその男は、俺の顔を見るなりそう言った。


「その施設を抜け出してきたんですよ。」

「へぇ?なかなか懐かれてんじゃねぇか、先生。いっそ引き取ってやったらどうだ?」

「なぁ。」

「あ?」

「お前もごくどーか?」

「あぁ?」

「ぜんぜん見えねー。スゲー弱そー。」


思ったまま口にすれば、ドクが慌てたように俺の名前を呼んだが、それをかき消すように男が笑う。


「弱そうで悪かったなぁ…極道だったらどうした?」

「だったら、いつか殺す。」

「お?」

「!?おい、槇雄…!」

「ごくどーは全部、殺す。」

「こ、子どもの言うことですから、どうか、その…」

「ははっ!いいじゃねぇか。母親の復讐ってんだろ?上等上等。」

「玄兎さん…」

「いつでも来いよ、坊主。」


男が、笑う。


「まぁ、お前には殺られねぇと思うけどなぁ?」








「…なぁ、ドク。あいつ、まだここに来てんの?」

「あいつ?」


不思議そうに振り返ったドクに、俺は足りない脳みそを振りしぼって何とかその名前を吐き出した。

頭から煙が出るかと思った。


「玄兎、ってやつ。いたろ?」

「玄兎……あぁ。」


どこか懐かしそうに目を細め、「そうか、お前知らなかったか…」と言いながらドクは何かの作業に戻る。


「玄兎さんは数年前に亡くなったよ。病気で。」

「……あ?びょーき?」

「元々あの人がここに来ていたのは、その薬を取りに来るためだったからな。」

「くすり…」


病人には見えなかったが、確かに弱そうだったなとは思う。

もしかしてあの時ドクが慌てていたのは、俺がそれを言い当ててしまったからか。


「ふーん…?」


一番身近にいて弱そうだったから最初に殺してやろうと思っていたが、死んでしまったやつに用はない。

別の標的を探すか。



『いつでも来いよ、坊主。』



「…………」

「槇雄?どうかしたのか?」

「……別に。」


そういえばあいつ、どんな顔してたっけか。




わらうおとこ

(その後、つるむようになったマブシにその話をすると、「チェシャ猫みたいだな」と言われた)
(今朝猫がどうしたって?)


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こっそり悪男祭より。


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嘘つき、ロンリー。