白旗と竜胴寺末弟


※原作終了後。








あの恐ろしい女の戦い…いや、「戦争」から早数日。

慌ただしく行われた『リバーサイドシャトウ』からの引っ越し作業も一段落し、俺もじいちゃんと約束した残り一ヵ月を新天地でしっかり全うしようと改めて決心した、その矢先。


再び、事件は起きた。


ゾンビ達が運び入れた新入居者の荷物の中に、俺は見覚えのある印を見付けてしまった。

いつだったか、イケミヤさんに教えてもらった家の紋。


それはお上の依頼で人間の廃棄を行う一族、竜胴寺―…


「竜胴寺玄兎です。今日からお世話になります。」

「えっと…書類ではヤマダタロウさん、ってなってますけど…?」

「はい。ヤマダタロウさん改め竜胴寺玄兎です。今日からお世話になります。」

「…………」

「白旗さん、お久し振りです。」


マンションの特色上、偽名が使われるのは仕方ないことなのだろうが、それでも会社から一言説明があっても良かったんじゃないかとそう思う。心の準備というものは大切だ。

今なら突然さくらさんに押し掛けられた時の、白旗のおっさんの気持ちが嫌というほどよく解る。

あの時のおっさんは見ていて分かりやすいほど挙動不審だった。


と、そこで恐る恐る隣のおっさんの様子を盗み見れば俺の視線に気付いたのだろう、何とも言えない複雑そうな顔でぼそりと「さくらの、弟だ」と言った。


(あの、さくらさんの…弟。)


改めて相手を見れば、俺より若そうだ。

下手すれば十代かもしれない。


「玄兎。お前、学校はどうした?」

「え?何ですか?『お前の姉ちゃんデベソ』?」

「…………」

「あの、学校の方はどうしたのか?って言ってます。」

「あぁ、通訳さん?確か望月さんのお孫さんでしたっけ?兄から聞いてますよ。助かります。僕、白旗さんが何言ってるのか全然分からなくって。まぁ、あの姉と結婚した時点で何考えているのかも全然解らないんですけどね。」

「…………」

「それで何でしたっけ?学校の話?それが姉が死んだおかげで、こちらに皺寄せが来たんですよ。学校辞めて家業を手伝えってことで。まぁ、そんな感じです。」

「あ……この度はその、ご愁傷さまでした。」

「ご丁寧にどうも。でもお気になさらず。むしろ姉を殺してくれたジェーン・ブラックさんには感謝状を送りたいほどです。」

「…………」


反応に困って思わず口をつぐむと、おっさんが溜め息を吐くのが分かった。


「家業を手伝うだけなら、別にわざわざここに引っ越してこなくてもいいだろう。」

「その仕事の一環なんですよ。研修みたいな意味もあるんですが…ほら、姉のせいで前のマンションが駄目になって、こちらに移動してきたばかりなんでしょう?だからまだシステムが不完全だそうで、竜胴寺からのお詫びを兼ねてセキュリティー強化の協力に来たんです。」

「……おい、会社から何か聞いてるか?」

「え?いや、俺は何も聞いてませんけど…?」

「まぁ、予定では最長でも一ヵ月ほどになるかと思います。その間、僕は姉を差し置いて白旗さんと一つ屋根の下…あの世で姉がそれを悔しそうに見ているかと思うと、はは、笑える。」


笑える、なんて言いながらも竜胴寺玄兎の顔は一切笑ってはいなかった。

というか、最初にここに現れた時からその表情は一向に変わることなく、終始真顔だった。

「そういう訳なので。改めてよろしくお願いしますね、だーりん。」






遅れてきた死亡フラグ

(なんか、弟さん…さくらさんのこと、ものすごく嫌ってたみたいっすね。)
(今でも嫌いなんだろ…色々あったからな。だから元夫の俺のことも嫌ってる。)
(まさか白旗さんのこと、殺しに来たってことはないですよね?)
(……正直分からん。)
(え、)


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こっそり悪男祭より。
リクエストありがとうございました!



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嘘つき、ロンリー。