一虎とバニー


※原作軸未来(東卍闇堕ち)。







「行かない方がいい」と辛そうに目を逸らした千冬から忠告されたのは数時間前。

だけど、どうしても行かなければ…とそれを振り払ったオレは今あの表情の理由を思い知り、立ち尽くしていた。


「……あぁ、一虎くん。」


恨まれている、とずっと思っていた。

目が合った瞬間に殴られ、蹴られ、罵倒され、下手すれば殺される、かもしれない。

いや、相手にはそうするだけの権利があり、自分は黙って総てを受け入れるしかない。


そう覚悟を決めていたというのに十年振りの再会は呆気なく果たされ、「久し振り」とたった一言で済まされてしまった。


自分が殺した親友(当の本人は「自分で死んだ」と言い張るだろうが)によく似たその顔には、何の感情も浮かんではいない。


「出所されてたんですか。もうそんなに経つんですね。」

「…玄兎…」

「ははっ。」


だが縋るようにその名を呼んだ瞬間、不意に玄兎が笑い出し、思わず肩が跳ねる。


「玄兎…?」

「あぁ、すみません…なんか懐かしくて。今じゃその名前で呼ばれること、ほとんどありませんから。」

「…………」

「一虎くんも、そっちで呼んでもらっていいですよ。知ってるでしょ?」

「………あぁ…」


場地の弟で、場地二号だから「バニー」。

そうふざけたあだ名を呼び始めたのはマイキーで、覚えている限りマイキー以外に呼ぶ人間はいなかったはず。


それが今では『東卍』幹部の一人として知れ渡っているなんて何かの間違いだと思った。


それをマイキーが許しているなんて、思いたくもなかった。


(……まさか本当に、場地の代わりに…?)


「それで、わざわざ俺に会いに来て何の用です?出てきたばかりで仕事に困ってるっていうなら相談には乗りますよ。」

「、玄兎、オレ、」

「謝罪とかなら別に何も要りませんから。」


先回りされた言葉を飲み込み、それでも何か話そうとしたものの、最早その名前さえ口にすることは出来なかった。



「もう、どうでもいいんで。」



ただの拒絶なら、まだマシだ。



「それとも、傷の舐め合いでもしたいですか?」


そう問い掛けながら掬うようにオレの髪を一房掴むと、玄兎はそれに唇を寄せて「髪、お揃いですね」と静かに囁いたのだった。




堕天使の微笑み

(『東卍』を取り戻せば、マイキーを救うことが出来れば、玄兎も)
(…なんて考えていたオレは、甘かった)


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嘘つき、ロンリー。