大介とツレ
※全体的に中城さんの扱いがあまりよろしくありません(笑)
玄関のドアを開けた瞬間、出てくる兄キと鉢合わしそうになった。
「あれ?オレより先に帰ってるなんて珍しいね。」
「荷物取りに少し戻っただけだ。」
そう素っ気なく言い捨ててそのまま立ち去る…かと思えば、何故かそこで足を止めたままの兄キはどうやらオレに「ツレ」がいることに気付いたらしい。
兄キの視線を受け、背後で慌てたように頭を下げる気配が、
「もしかしてお前、『玄兎』か?」
「、ぇ」
ハンパに終わってしまった挨拶に戸惑う声。
初対面で突然名前を呼ばれたのだから無理もない。
構わず兄キは無遠慮にその姿を上から下までジロジロと眺め回すと、フッと笑ってみせた。
「あの中城に憧れてるんだってなァ?物好きなやつだな。」
「あははー、そういや前に兄キに話したの、すっかり忘れてた。」
「……テメェ、余計なことを…」
「ゴメンゴメン!今度ちゃんと訂正しとくからさぁ、許してよ。」
「………もう、いい。」
不機嫌そうに話を打ち切ると、そっぽを向いてしまった玄兎。
適当にその辺に置いてあった雑誌を手に取って読み始めたその横顔はほんのりと赤く、オレはニマニマと笑いが止まらなかった。
怒っている、というより多分恥ずかしいんだろうなぁ…と。
そして、それを隠そうとして隠しきれていない様子が何とも言えなかった。
そもそも「中城さんに憧れている」と言っていたのは当の玄兎自身で、オレ達がツルむようになったのもそれがキッカケだった。
『なぁ、高里。お前の兄貴って条南なんだろ?その…中城さん、と知り合いだったりすんの?』
中城さんには悪いが、その時のオレも兄キと同じように「物好きだなぁ…」というのが正直な感想。
でもまぁ悪いやつではなさそうだし、ついでに「中城さんのどこが?」と好奇心が勝って、しばらく玄兎の話に付き合うことにした。
街中で時々見掛ける「中城さん」が気になって…と少し照れたように話す玄兎はまるで恋する乙女で、ますます面白がったオレはつい兄キにもそれを教えてしまった。
ただ、玄兎の話を聞いていく内に何となく違和感のようなものを覚え始め、ようやく「玄兎が勘違いをしている」と思い至ったのはつい先日のことだ。
『もしかしてだけどさ、玄兎の言う「中城さん」ってオレの兄キのことじゃない?』
『は?いや、だって、条南の頭は「中城さん」だろ…?』
『確かに頭は「中城さん」って人だけど、実質取り仕切ってんのは兄キなんだよね。オレもよく「条南頭の高里の弟」って言われるし。』
『………は?』
その後、兄キの写真を見せた時の反応はスゴかった。
つまり玄兎は、実の弟であるオレに向かって兄キに対する惚気話を延々言い続けていた、というわけだ。
(あれは本当、可愛かったなぁ…)
「でも良かったじゃん。」
「あ…?」
「兄キってさ、興味がないやつのことなんて認識すらしないよ?絶対。」
「…………」
それを認識した上に声まで掛けてきた、なんて、ストレートに「兄キに憧れてる」と紹介していればまずあり得なかっただろう。
雑誌で顔を隠すように「……まぁ、そうだな…」と小さく相槌を打つ玄兎も満更ではないらしい。
中城さんには色んな意味で感謝しなければ。
なんて改めて思いながら、オレは今日玄兎を誘った口実であるゲームの準備をすることにした。
さすが中城さん(笑)
(兄キに本当のこと言ったら玄兎から興味なくすかもだけど、)
(オレは気に入ってるからまぁいいよね!)
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嘘つき、ロンリー。