加治屋とツレ
「…飯食い行くゥて言うたじゃろぉが。何食いよんのじゃい、ボケ。」
店に一歩足を踏み入れるなり、そう言って眉を顰めた加治屋。
その様相は明らかにその筋の人間のそれだったが、対する方も似たような人種だったので特に問題はなかった。
焦ることなく、もぐもぐと咀嚼してようやく玄兎が口を開く。
「じゃけどのォ、お好み焼き屋に入ってお好み焼き食わん言うんもなァ…」
「玄兎が正しいわい。ちゅうか、ここで待ち合わせすなや。」
「くくっ…まぁ座りぃや、加治屋ぁ。」
「…フン。」
さすがに福沢と嵜島の加勢には負けるのか、舌打ちしながら加治屋が玄兎の隣にドカッと腰を下ろす。
「カジくんは食わんの?」「いらんわい。とっとと食えや」なんてやり取りを見届け、福沢は加治屋の分のお好み焼きに取り掛かろうとした。
が不意に、そんな二人を微笑ましそうに眺める嵜島に気が付いた。
『なんちゅーか、小さい頃から知っとるだけに切なくてのぉ…』
いつだったか嵜島とそんな話をした時、福沢は「よくある話だ」と切り捨てたが、その気持ちが解らない訳ではなかった。
実際のところ、今だって同じ心境だ。
その年上の勝将ぐらいしか遊び相手のいなかった加治屋が、今ではこうして待ち合わせし、軽口を叩き合っているのだから感慨深い。
友達と呼ぶには少々物騒な『きずな』ではあるが、それこそ自分達にとっては「よくある話」だ。
「ほれ、食えや。」
「…ワシゃあ頼んどらんど。」
「えぇなァ、カジくん。んじゃあ、ワシももう一枚。」
「おい。」
「えぇじゃない。もォ、ここで飯にしようやぁ。」
「よう言うた、玄兎。一枚サービスしちゃろう。」
「うぉお、マジすか!」
「…………」
ついには黙り込んでしまった加治屋を見れば、玄兎の方に軍配が上がったのは一目瞭然。
その様子に嵜島と福沢は顔を見合せ、どちらともなく声を上げて笑ってしまうのだった。
ヘイ!ブラザー!
(…何笑いよんのじゃ。)
(いやいや。しっかり尻に敷かれとるじゃん、お前。)
(あァ?)
(まぁえぇけぇ、食え食え。)
(うっま!これうっま!ちょ、カジくんも食ってみぃて!)
(……チッ…)
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嘘つき、ロンリー。