楠と同級生
春木と楠が食堂で昼食を取っていると、どこからともなくふらりと現れた玄兎が二人の前に座った。
が、何かを食べ始める様子はなく、ただ黙って頬杖をついて春木の顔をじっと見つめるだけ。
しばらくは構わずにその視線を受けていた春木だったが、とうとう我慢できなくなった。
「…ジロジロ見てんじゃねぇよ、食いづれぇ。」
「やっぱ分からんのぉ。」
「あ?」
「楠の、好みのタイプ。」
「…………」
そして、すぐに後悔した。
「いや確かに春木もイケメンの部類に入るんじゃろうが、ワシとしちゃあ、もうちっとこう…厚みが欲しいとこじゃのぉ…のう?」
「あぁ?知るかよ。」
「なんねぇ、アンタ。ウチの春木ちゃんに文句があるんね?」
「おい、誰がテメェのだ。」
「ありゃりゃ?何じゃあ春木ちゃん、照れとんの?」
「おーおー、あっついのぉ。」
「うるせぇ。」
楠一人でも面倒だというのに、それが二人ともなると厄介だ。流石の紅葉神島の元頭でも手に負えない。
そう判断した春木はさっさと残りの昼食を掻き込むことにした。
その様子をもう一度無遠慮に眺め回すと満足したのか、腕を組んで「うんうん」と一人頷く玄兎。
「やっぱ男はゴリラが一番じゃ。花京院とかえぇのぉ…飛田もなかなか、いや蛭間も捨てがたい。」
「えぇ?アンタの好みの方が、ウチにはよう分からんわいねぇ。」
何やら盛り上がりだした玄兎と楠に、三人の周囲から徐々に人の姿が消えていく。
春木も、あと少しだった。
「あ、ワシ、楠も結構イケるど。」
しかし、玄兎の方は一体どこまで本気なのか。
なんて考えている間に、ようやく空になったトレイを持って春木が立ち上がる。
その瞬間。
「………あ?」
ふと楠が黙り込んでいることに気付き、何気なくそちらを見て思わず目を見開く。
珍しくも照れたように顔を逸らすドレッド頭の大男が、そこにいた。
うっかり、ときめいた。
(…おい。今の、ちゃんと聞いてたか?ゴリラ扱いされてんだぞ、お前。)
(……分かっとうよ、春木ちゃん。分かっとるけどねぇ、アンタ。乙女心は複雑なんよ…)
(何じゃ、春木。嫉妬か?)
(違ぇよ。)
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嘘つき、ロンリー。