三ツ谷と雑学好き
※原作軸過去(東卍)。
ハサミさま、というものを知っているだろうか。
もしかしたら地域によって呼び名が少し異なるかもしれないが、自分の耳元でハサミをシャキシャキと開閉させて失せ物などを見付ける、お手軽なおまじないのことだ。
原理としては脳に命の危険を感じさせてフル稼働させ、掘り起こされた記憶の中から目的の物を検索する、らしい。
ちなみに「掘り起こされた記憶」とは、勿論走馬灯のことだ。
「だから今の俺なら、落としたボタンも見付けられる。多分。」
「そうか、そりゃ良かったな。」
そう顔も上げずに答えた三ツ谷は、相変わらず俺の胸元でチクチクと針を動かしている。
その三ツ谷の指先が時折肌に触れる度、いつその針が心臓に突き刺さるかと俺は気が気ではなかった。
ドキドキしていた。
『玄兎、お前、ボタン取れてるぞ?』
仲間に指摘されてすぐに辺りを見渡したものの、残念ながらそれはどこにも落ちていなかった。
誰も気付かなかっただけで、随分と前に千切れてしまっていたらしい。
俺も全然気付かなかった。
上から二番目、開いていると少し露出が多くなってしまうが、まぁ、ないものは仕方ない。
なんて諦めていたところ、「付け直してやろうか?」と声を掛けてきたのは三ツ谷だった。
『けど、その肝心のボタンがねぇんだよ。』
『服の裏に予備がある時あんだろ。見てみろよ。』
『………おぉ。』
初めて知ったその存在に少し感動していると、三ツ谷がどこからか簡単な道具を一式取り出してみせたため、俺はそのまま三ツ谷の言葉に甘えることにした。
『このままじゃ、やりにくいだろ。脱ぐか?』
『そのままでいい。すぐ済むからじっとしてろ。』
そして宣言通り、作業はものの数分で終わった、と思う。
器用に動く三ツ谷の手元を見下ろしたり、目線を伏せた三ツ谷の顔を見上げたりしていた俺には長い時間が経ったように感じられたが。
「出来たぞ。」
「おぉ…サンキュ。」
礼を言いながら上着の前を順に閉めていけば、しっかりと縫い付けられた第二ボタン。
それを見下ろして、次に他の箇所が千切れた時はまた頼む、と顔を上げると、改めてその距離の近さに気が付いた。
「やべ…まだちょいドキドキしてるわ。」
そう言って自分の胸に手を当てみせれば、三ツ谷は「オマエのそれは、どっちかと言うと吊り橋効果だろ」と呆れたように、だが小さく笑った。
針子さまの云うとおり
(どうして「惚れた」と分かったんだ?)
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こっそり悪男祭より。
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嘘つき、ロンリー。