三途と近所の少年


※原作軸過去。







「お姉ちゃん!」


まだ日の高い公園内には子どもの姿が多く、そこかしこで上がる楽しげな声は公園の外近くまで届いていた。

だから、不意に聞こえてきたその声も武藤にとってただのBGMの一つだったのだが、三途にとってはそうではなかったらしい。


「玄兎、今帰りか?」


振り返る三途の足に、突然飛び付いてきたのはランドセルを背負った小さな少年。

一瞬「弟か?」と聞こうとした武藤は、以前三途自身が一人っ子だと話していたのを思い出した。


「すみません、隊長。コイツ、近所のガキなんですけど…」


三途の言葉にようやく武藤の存在に気付いたのか、玄兎と呼ばれた少年が顔を上げる。

目が合うとすぐ三途の後ろに隠れてしまったが。


(懐かれてる、みたいだな…)


この年頃にはまだ、マスクに特攻服姿の意味などよく解らないのだろう。

確かに見た目だけで言えば、細身の三途は「優しいお兄さん」に見えなくもない。

現にガタイのいい武藤を前にして、玄兎は分かりやすく萎縮してしまっている。


だが、どんな理由があれ、あのマイキーが「暴れ馬」と評して預けてきた三途が年下に慕われる姿を見ると、武藤は妙に感慨深いものを覚える。


「ほら、玄兎。ちゃんと隊長に挨拶しろ。」


そう言って促す様子など、しっかりと「兄貴分」である。

ならば三途の弟分は自分にとっても弟のようなものだ、と武藤は身を屈めて「たいちょー?」と不思議そうに首を傾げる玄兎と目線を合わせた。


おずおずと玄兎が顔を覗かせる。


「こ、こんにちわ。えっと、お姉ちゃんの、お、おともだち、ですか?」


お友達、という懐かしい響きに苦笑しながらそれに応えようとして、ふと何かに引っ掛かった。


「……おねえちゃん?」


そう言えば最初に声を掛けてきた時もそんなことを言っていたな、と今更気付く。

反射的に三途を見上げると、居心地悪げにその目を逸らされ、総てを察した。


「…あぁ、そうだな。この『お姉ちゃん』の友達だ。」

「隊長…」


何か言おうとする三途を遮るように、武藤が玄兎の頭を一撫でしてやれば、擽ったそうに笑う玄兎。

三途の知り合いと認めて警戒心を解いたのだろう、武藤もつられるように目を細めた。


「三途、このまま家まで送ってやれ。」

「…分かりました。それじゃあ、ここで失礼します。…オマエも挨拶。」

「たいちょーさん、さようなら!」

「おう。」


頭を下げる三途に、手を振る玄兎。

そんな二人に見送られて歩きだした武藤だったが、途中何気なく立ち止まり、そして振り返った。





特攻服とランドセル

(手を繋ぐわけでも、歩幅を合わせて歩いているわけでもない二人だが、その後ろ姿はまるで、)
(……まぁ、あれなら補導される心配はないだろ。)


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嘘つき、ロンリー。