若狭と腐れ縁(+真一郎)


※最初の世界線過去(黒龍)。









『見る目がねぇんだろ。真一郎も、相手の女も。』


ぼそりと聞こえたそれを、真一郎は今でもよく覚えている。

何度目かになる失恋の際、仲間達が「恋も喧嘩も最弱王」と揶揄しながら慰めようとするのに紛れ、その声はいっそ冷ややかで素っ気ないものだった。


だというのに。


『とりあえずパーッとやろうぜ、パーッと。真ちゃんの失恋祝いだ。』

『祝っていいのか、これ。』

『騒げりゃ何でもいいだろ。何なら今からどっかに喧嘩でも売るか?』

『オマエらなぁ……?おい?どうした、真?』


ふと立ち止まった真一郎に気付き、振り返ったのは武臣だけ。

それに「何でもない」と返しながら真一郎は前を行く三人から、いや、正確に言えば玄兎の横顔から目を離せずにいた。


元『煌道連合』の人間で、ワカの懐刀。

どんなに周囲から「甘い」と言われようが玄兎にとっての「特別」はワカ一人で、『黒龍』結成後もそれは変わらなかった。


その、玄兎が。



『見る目がねぇんだろ。真一郎も、相手の女も。』



ぼそりと聞こえたそれを、真一郎はどうしても忘れることが出来なかった。










「この間のアレ、どうしてオマエがついておきながらあんなことを許したんだ?」

「若狭が俺の言うこと聞くわけねぇだろ。言うだけ無駄だ。」

「そこで黙ってついていくからオマエは甘いって言ってんだよ。」


武臣と玄兎が何か話していると思えば、どうやら先日起きた抗争でワカが独断専行した一件についてらしい。

当事者不在でおかしな話だが、やり取りしている二人は特に違和感を覚えていないようだ。


(武臣も、直接ワカに言えばいいのにな…)


内心苦笑しつつ、二人に近寄っていった真一郎は玄兎が何か口を開きかけたところでそれを遮るように声を掛けた。


「玄兎。」


同時に二人が振り返る。

玄兎の視線が、真一郎へと向けられる。


「ワカは?一緒じゃねぇの?」

「さっきベンケイとコンビニ行ったっぽいけど。何か用でもあったか?」

「んー、いや?じゃあオレもそっち行ってみっかな…なぁ、オマエも行かね?」

「おい、まだこっちの話は終わってねぇぞ。」

「武臣も行こうぜ。」


そう有無を言わせずニッと笑ってみせば、武臣は一瞬眉を顰め、だが結局「仕方ねぇな…」と溜め息混じりに首肯した。

そしてもう一度、玄兎に水を向ける。


「玄兎は?どうする?」

「そうだな…俺も行く。」


真一郎を見つめながら、玄兎の頭を占めているのは恐らく若狭のことだろう。

いつものことだ。


だけど、そんな玄兎の中にも「佐野真一郎」という一人の人間がしっかりと存在しているのだと自覚した、あの瞬間。


「っし、んじゃ決まりだな。」


あの時感じた『悦び』が真一郎を捕らえたまま、いつまでも離すことはなかった。





連敗記録更新中。

(……もしあれが、オレだったら、…)

(最期の瞬間、ほんの一瞬、ほとんど無意識的に、)
(頭の片隅に過ってしまったその願いが呪いに変わってしまうことなど、真一郎は知る由もなかった)


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こっそりT卍R祭より。
リクエストありがとうとざいました!



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嘘つき、ロンリー。