真一郎と後輩


※最初の世界線過去(黒龍)。










『初代黒龍』の旗を前に総長が座り、その左右を最強コンビが固めて背後に副総長が仁王立ち。

チーム結成の記念写真として完璧な布陣だというのに(現に先程まで他三人にあれこれ指示を出していた武臣くんはどこか満足げに見えた)、真一郎くんだけがいつまでもこちらを手招いていてじっとしてくれない。


「なぁ、玄兎。やっぱりオマエもこっち来いよ。」

「だから俺はいいんですって…」


何度このやり取りを繰り返せば気が済むのか。

いや、そもそも百歩譲って真一郎くんの言う通りにしたとして、一体どこに俺を配置するつもりなのか。


バランスを考えるとワカくんやベンケイくんの隣は少々具合が悪いし、となると残りは真一郎くんか武臣くんの隣になるが、どちらにしてもとんでもない話だ。

いくら親しい先輩後輩の間柄とはいえ立場というものがあり、単なるいち兵隊が総長、副総長の隣なんて恐れ多すぎる。特に前者。


可愛がってくれるのは有り難いが、贔屓だ何だと周囲から目の敵にされてチーム内で孤立するような事態に陥りたくはない。

ひっそり静かにやり過ごしたい俺にとって、ぶっちゃけ今ここに立っていることだってギリギリ判定だ。


「真ちゃん、もう諦めろよ。」

「そんなに撮りたきゃ後で二人で撮りゃいいだろ。玄兎も、それでいいよな?」

「あー、いいですいいです。後でもう好きなだけ付き合いますから。とにかく今はこれ、さっさと撮らせてください。お願いします。」


呆れた様子のワカくんとベンケイくんの説得に便乗すれば、渋々とだがようやく納得してくれたらしい真一郎くん。

その気が変わらない内に、と俺はすぐさまカメラを構え直した。


「しっかり撮れよ、玄兎!」

「うぃーす。」


そして、武臣くんの言葉に適当に返事を返しながらファインダーを覗き込んだ瞬間。

じぃっとこちらを見つめる真っ黒な目と目が合った、ような気がした。


「…んじゃ、いきますよー。はい、ちーず。」










「…で、その後マジで真一郎くんの気が済むまでバシャバシャ大量に撮りまくる羽目になって、結果俺は写真嫌いになったわけなんですけど。」


その「写真嫌いの俺」が「真一郎くんとのツーショット写真」だけは断らなかった、と事の経緯があべこべにチーム内に伝わってしまい、気付けば真一郎くんと俺は『特別な関係』だという誤った認識にまで発展。

幸か不幸か、それについて贔屓だ何だと騒ぐような連中はいなかったが、逆に何故か祝福され何故か幹部にまで押し上げられてしまったのは間違いなく俺にとって不幸な出来事だった。

誤解を解く暇なんて全くなかった。


その上、更に後になって判明したのは―…



「そもそもあの時、写真片手に『俺達はそういう関係だ』って言って回ったの、真一郎くんだったそうじゃないすか。何でそんな嘘吐いたんすか。」

「だってそうでもしねぇとオマエ、絶対何だかんだ言ってオレ達に近寄ってこなかっただろ?」


バイク整備中の後ろ姿に向かって言葉を投げ掛ければ、真一郎くんは悪びれる様子もなく笑って振り返りながら「それより玄兎、こっち来いよ」といつかと同じように俺を手招いた。


「『好きなだけ付き合う』って、あの時オマエ言ってたよな?」


その真っ黒な目も、いつかと同じようにじぃっとこちらを見つめていた。





深淵に覗き込まれた末路

(そういう意味じゃなかった、という反論も静かに飲み込まれていった)


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嘘つき、ロンリー。