大寿と『黒龍』


※最後の世界線過去(黒龍)。
※平和的な柴家捏造注意。











「玄兎くんってさ、兄貴のどこが好きなの?」


そう八戒に問い掛けられた瞬間、一瞬デジャブのようなものを感じた。


次に、何故「大寿のことが好き」という前提なのか、男同士でそれはないだろ、と即座に前提そのものを否定しようとして、ふと八戒の言っている「好き」の意味について少し冷静になる。


別に何も色恋沙汰とは限らない。


大寿は同じ十代目『黒龍』に所属し、更に言えばそのトップだ。

それが嫌ならとっくの昔にチームを抜けているはずで、そうでなければ…まぁ極論として「好き」だと言えなくもない、と思う。あくまで極論だが。


「玄兎くん?」


なんて誰とはなしに言い訳していると、不思議そうに首を傾げる八戒と目が合い、少しばつが悪くなってしまった。


一体、俺は何を真剣に考え込んでいたのか。

八戒の質問に特に深い意味はない、と何とか自分に言い聞かせる。


「あー…まぁ、頭切れるし、強い、よな。」

「それから?」

「そ、それから?」


当たり障りのない、適当な褒め言葉を並べてさらっと流そうとしたら、まさかの催促。

戸惑いつつ、何とか「それから…特服が似合う、とか…?」と続けてみるも、ふんふんと頷く八戒は「まだ何かあるだろう」と言わんばかりに黙ったままだ。


(何が聞きたいんだ…というか、聞いてどうすんだ、コイツ…?)


そんなに兄貴大好きか、というツッコミが喉元まで出かかって飲み込む。

何となく藪蛇になりそうな、嫌な予感がして、とにかく早く話を切り上げようともう一度だけ適当に思いついた言葉を、


「……あのタトゥー、いいよな…」





「おい。」





「っ、!?」

「兄貴?」

「オマエ、出掛けるって言ってなかったか?」

「あ、そうだった。ごめん玄兎くん、じゃあね。」


言うが速いか、こっちの返事も待たずにさっさと行ってしまった八戒の後ろ姿を呆気に取られて見送っていると、「オレ達も行くぞ」と同じく返事をする間もなく横を通り過ぎていく大寿。

何かを誤魔化すように思わず舌打ちした。


(……人に「迎えに来い」って命令した癖に、散々待たせておいて偉そうに…)


そして、大寿の後に続いて最後に柴家を出た。


「八戒と何の話してやがったんだ?」

「別に、大した話はしてねぇけど…というかお前んち、きょうだい仲いいよな。」

「家族だからな、当たり前だろうが。」

「そうかよ…おかげでこっちは八戒に変なこと聞かれて」

「玄兎。」


不意に前を歩いていた大寿が振り返り、つられて足を止める。


「そんなに好きなら、今度じっくり見せてやろうか?」

「あ?何を、」




『―……玄兎、』




その瞬間、「全く身に覚えのない光景」が脳裏に蘇り、カッと頭に血が昇る。


「バッ…いらねぇよっ!」


それごと振り払うように慌てて拒否すれば、カッカッカッ!と大寿は愉しそうに笑ったのだった。





愛の定義を教えてくれよ

(薄明かりの中でこちらを見下ろしていた相手は、確かに大寿で)
(何故か上半身裸で、)

(全く身に覚えがない、はずなのにそのタトゥーはやけに鮮明に覚えている)


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嘘つき、ロンリー。