桐島と同級生


「覚えてやがれ」なんてテンプレな捨て台詞、実際に聞いたのは初めてだ。

と言っても別に何の感動もなく、ただ溜め息を吐きながら走り去るハゲ達を見送るだけ。


そして近くにあったベンチに座れば、タイミング良く差し出された缶コーヒーを「あー、さんきゅ」と受け取って、


「…なぁ、桐島くん。」

「ん?」

「さっきの、見てたんなら普通手を貸してやろうとか思わね?」

「助けて欲しかったのか?」

「そりゃあもう、割と、切実に。」

「それは悪かったな。」


その謝罪からちっとも誠意を感じられないのは、俺の被害妄想だろうか。


しかし、先程『見ていた』ことを否定しなかった時点で奴の有罪は確定している。

それに澄ました顔で俺の隣に腰を下ろしたその手には別の缶コーヒーがもう一本。

つまり、たまたま持っていたんじゃない。

わざわざ買いに行くだけの余裕が桐島にはあった、ということだ。


「………はぁ…」


何だかどっと疲れが押し寄せ、俺は缶のプルタブを開けると一口それを啜った。


………無駄に甘い。

よく見れば激糖なんてとんでもない代物だった。

というか激糖なんてあんのかよ、おい。


「…うん。よく考えたら俺達、これまであんま話したことなかったな。だからこういう行き違いが起こるのも無理ないわ、うん。ちょうどいい機会だし、ここらで一度お互いに腹割って話そうじゃねぇの。とりあえず一発殴っていいか?」

「疲れた時には甘いものってよく言うだろ?」

「殴っていいか?」


笑う桐島がしっかり無糖を飲んでいるのにまたイラッとする。


やけになってその激甘コーヒーを一気に呷れば、思った通り、胸にズンッと重いものが落ちてきた。


まったく、今日は鳳仙に絡まれるわ、ろくに知りもしない同級生にからかわれるわで散々な一日だ。


「次はちゃんと助けてやるよ。」

「次があってたまるか。」







おととい来やがれ!

(…この捨て台詞も、あんま聞かねぇなぁ…)
(なんて他人事のように思ったのは現実逃避だ)

(そして思った通り、後日『次』があった)


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嘘つき、ロンリー。