大寿と『黒龍』02
※原作軸過去(黒龍)。
※聖夜決戦後の話。
正直あまり認めたくはないが、俺が『柴大寿のサンドバッグ』だということは周知の事実だった。
なので怪我やら何やらでチームに顔を出さない日が続く度、チーム内で「とうとう玄兎はボスに殺された」と噂が流れ、それを真に受けた馬鹿が俺の顔を見て悲鳴を上げることも何度かあった。
その度に俺を宥めていたのは乾だ。
だが今、その乾が俺と顔を合わせるなり、心底驚いたような表情をしている。
「玄兎…オマエ、生きてたんだな…」
「…お前までそんなことを言うのかよ。」
何となく裏切られた気分で、ついでに少しばつの悪さを感じながらそう言い返せば、「だってココが、」と乾の口から出てきた名前に嫌な予感がした。
「今頃お前は大寿に抱き潰されて死んでるだろうって。」
その瞬間、乾の後ろで訳知り顔でニヤニヤ笑っていた九井に思わず殴り掛かった俺は絶対に悪くないはずだ。
「遅かったな。」
コンビニから戻った俺を振り返ることなく、パソコンに向かう大寿の後ろ姿は部屋を出る時と変わりがない。
何をやっているのか俺には分からないが、頭のキレる大寿のことだ、恐らくもうすでに「次」を見据えて行動に移しているのだろう。
その切り換えの速さに感心すると同時に苛立ちが募る。
『まぁ、とにかくだ。生きてたんなら一回花垣に顔を見せとけよ。』
『あ?はながき…?東卍のトップは「無敵のマイキー」だろ?』
『オレ達十一代目「黒龍」は「東京卍會」壱番隊隊長花垣タケミチの下に着いた。』
チームから離れている間に、色んな事情に疎くなっている自分を嫌でも思い知らされた。
その上、その原因である張本人まで俺を置いて行こうとしているように思えた。
『それとも、オマエは大寿を―…』
「…そこで乾達と会って、少し話した。」
「ふん、そうか。」
「俺はチームに戻る。」
これまでの経験上「殴られるかもしれない」と身構えていたものの、返ってきたのは「好きにしろ」と素っ気ない一言。
暴力が全てではない、と考え直したというのはどうやら本当のことらしい。
ならば、と意を決し、言葉を続ける。
「それで…お前の、特攻服が欲しい。」
「あぁ?」
そこでようやく振り返った大寿は眉間に深い皺を寄せ、だがその口元をどことなく愉しげに歪めている。
「別に『黒龍』に未練はねぇだろ?」
「くれてやるのはいいが、どうするつもりだ?まさかアレを着て、乾達と十一代目を奪り合う気かぁ?」
「そんなつもりはねぇよ。」
上に立つ器ではないことは俺が一番よく解っている。
そもそも大寿のサイズだ、デカすぎてみっともないだけで着るつもりもない。
「なんつーか…後押し、みたいなもんが欲しい。」
あるいは戒めか、退路を断つ覚悟か。
何にしろ、今俺の中にあるごちゃごちゃとした色んなものを全て吹き飛ばす、それこそ大寿の「暴力」のような強烈な一撃が欲しかった。
(…なんて、九井の言う通り俺はマゾかよ……)
すると、少し考え込んだ様子の大寿が自身のポケットを探り、何かを取り出すとこちらに放って寄越してきた。
反射的にそれを掴めば、
「…何だよ、これ。」
「この部屋の鍵だ。」
「は?」
「特攻服が欲しいんだろうが?ソレ持ってろ。」
話は終わりだと言わんばかりに再びパソコンに向き直ってしまった大寿に、口を開きかけ、結局何を言っていいか分からずに閉ざした。
そして手の中の、キーホルダーも何も付けられていない、部屋の主によく似た無骨なそれをただただ見つめた。
きみよ、こひたまへ
(散々大寿に殴られて、めちゃくちゃにされて、)
(俺は少しおかしくなったのかもしれない)
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こっそりT卍R祭より。
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嘘つき、ロンリー。