デリコと年上の恋人
ここ最近、俺はフォークやナイフより重い物を持っていない。
それは決して比喩ではなく、恐ろしいことに冗談でもなかった。
「お前はどこの深窓の令嬢だ。」
「あ、やっぱりお前もそう思うか?」
分かってるならどうにかしろよ。
なんて呆れ顔のディエゴに見送られたのはつい数分前のことだ。
その時の俺は処分予定の書類を入れた段ボール一箱、抱えていたはずなのだが。
(あぁ、やっぱりまたこうなる訳か…)
何も持っていない両手を見つめ、そして隣を歩くデリコをこっそり盗み見た。
今にも鼻歌を歌いだしそうなほど上機嫌で、段ボールを抱えている。
言うまでもなく、つい先程まで俺が持っていた物だ。
「…なぁ、デリコ。」
「はい?」
「何でいつも俺の荷物を持ってくれるんだ?」
それがあまりにも嬉しそうなので「返せ」とも言えず、苦し紛れに以前から気になっていたことを聞いてみた。
確かにデリコは礼儀正しい好青年だ。
年上を立て、よく気が利く。
だが聞いた話によれば、ここまで尽くしているのは俺に対してのみらしい。
(まさか、デリコには俺がそんなに貧弱に見えるのか…?)
それこそディエゴに鼻で笑われそうなことを考えていると、デリコが不思議そうに首を傾げた。
「?恋人の荷物を持つのは当たり前でしょう?」
ごく当たり前のように告げられた言葉に一瞬、思考が止まる。
いや、確かに俺達はここ最近『そういう関係』になったばかりだ。
そこは否定しない。
だが今の言葉の響きからすると、まるで俺が『カノジョ』ポジションのような…
(!?ないないない!ありえないだろ、それ!!)
ありえないついでに、脳内のディエゴが爆笑している。
それを頭の中で殴り飛ばし、すぐさま抗議しようとデリコに向き直った。
可愛いお前の方が『カノジョ』だろ!?
そう口を開きかけた途端、いつの間にかデリコの表情が悲しげに歪んでいるのに気が付いた。
「迷惑、ですか…?」
とんでもない!
(いや、俺が『カノジョ』ってのもとんでもない話だけど!)
(そうですよね…俺なんかが玄兎さんと並ぶなんて…)
(ちがっ…ディエゴー!ディエゴさんー!ちょ、ヘルプ!)
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嘘つき、ロンリー。