ガラハッドと悪徳警官
賑やかな店内は今日も満員御礼。
特に大きなトラブルもなく、ここ『バスタード』の一支配人として、ガラハッドはその様子を満足げに見渡していた。
だがふとそこへ、「おい、」と不機嫌そうな声が掛かる。
「話がある。」
振り向けば予想外の人物に、ガラハッドは一瞬目を見開いた。
ネクタイなしの、少しよれたスーツ姿の男。
それは一見客のようだが、その纏う空気はどちらかと言えば『こちら』に近いものだ。
だから、気付かなかったのかもしれない。
「いいんすかね。オマワリさんがこんな時間、こんなところに来ても?」
気を取り直してガラハッドが揶揄するように笑いかけると、男はその不機嫌そうな顔をますます歪めて舌打ちした。
「仕事に決まってんだろ。」
「にしては真正面から堂々と入ってきたなぁ、アンタ。」
「はっ、この街じゃあ下手な隠し事なんてするだけ無駄だ。」
「ぶはっ、そりゃあ違いねぇ!」
「いいからさっさと質問に答えろ。」
これ、『ここ』の女だろ。
そう言ってポケットから取り出した写真をガラハッドの鼻先に突きつける。
そこに写っていた顔中に痣のある女は、どう見ても生きたそれではなかったが、ガラハッドにはすぐその生前の姿が脳裏を過った。
「ん?あー、どうだったかねぇ…ここも割と出入りが激しいしよ。」
「そう警戒するんじゃねぇよ。これは単なる痴情の縺れで、お前らとは何の関係もねぇ。ただの身元確認だ。」
「へぇ?アンタもそんな仕事をすんのかい?」
「どこぞの輩が余計な仕事を増やしてくれるもんでな。それでどうなんだ?便利屋はここの歌姫だとか何とか言っていたが…」
「便利屋さんが言うんならそうかもしんねぇなぁ。」
あくまでしらを切るガラハッドに、男は目を細める。
そしてしばらくガラハッドを睨み続けたものの、らちが明かないと察したのか、肩を竦めて「邪魔したな」と背を向けた。
「玄兎さん。」
その背中に、今度はガラハッドから声を掛ける。
「お嬢にゃあ、会っていかねぇのかい?」
「生憎ガキには興味ねぇよ。」
玄兎は振り向くことなく、そう吐き捨てた。
本音と建前
そして『バスタード』を出る直前にクリスチアーノに見付かり、玄兎はまた舌打ちするのだった。
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嘘つき、ロンリー。