便利屋と仲間
「あ、玄兎。お帰りなさい。…玄兎?」
事務所のドアが開く音と共に聞こえてきたアレックスの声。
だがその声にはすぐに困惑の色が滲み、不思議に思ったウォリックは着替え途中の手を止め、顔を覗かせた。
「アレッちゃん、どったの?」
「!ウォリック、それが玄兎が急に…」
「玄兎?」
見れば戸口付近で立ち止まったまま天井を仰ぐ玄兎と、その傍らで右往左往するアレックスの姿。
どこか見覚えのあるその光景に、ウォリックは思わず笑ってしまった。
「玄兎?どうかした?どこか痛いの?」
「…………」
「あー、大丈夫大丈夫。それ、玄兎の性癖だから。」
「せ、性癖…?」
「放っておけばすぐ収まるから。」
「黙れ、半裸野郎。」
確かあの時、アレックスの位置にいたのはニナちゃんだったっけ?
なんて無駄に優秀な記憶を辿っていると、「性癖って言うな」と苦々しく吐き捨てられた言葉に肩を竦める。
「このむさ苦しい男所帯で今、女に出迎えられるという感動を噛み締めてんだ、邪魔すんじゃねぇよ。…なぁ、アレックス。」
「な、何…?」
「頼む。一度でいい…ぜひアレをやってくれ。」
「?アレって…?」
ウォリックの言うように『収まった』らしい玄兎が、アレックスの手を両手で包み込み、自身の胸の高さまで掲げる。
「この状況で、やることは一つに決まっているだろう?」
どこか真剣な表情はウォリックとはまた違った男前で、思わずアレックスもドキッとしてしまった。
ただ、次の瞬間にはその雰囲気もぶち壊されるのだが。
「『お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも、』ぅあっ!?」
何もかも台無しな科白。
そしてそれを最後まで言わせず玄兎を抱えあげたのは、今まで我関せずと一人静かに雑誌を読んでいたニコラスだった。
玄兎は慌ててアレックスから手を離し、抵抗する。
「ニック、テメェ…!何すんだ、数少ないチャンスを…!」
そんな玄兎を片腕で封じたまま、玄兎にも見えるようにニコラスの片手が急かしく動いた。
その動きの意味をアレックスも目で追う。
『飯か風呂か、それとも、』
続く言葉が何だったのかアレックスにはよく解らなかったが、傍らでウォリックが噴き出すのを見ると、それはあまり良い意味ではないのだろうと察する。
その証拠に、玄兎の顔も真っ青に染まっていたのだった。
ちなみに選択権はない。
(死ぬ死ぬ!それ、死ぬ!!ちょ、助けろウォリック!)
(えー?どうしよっかなぁ…俺ってば、玄兎に「むさ苦しい」って言われて傷心中だしぃ?)
(えっと…ニコラス?何だかよく解らないけど手加減してあげてね?)
(……………)
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嘘つき、ロンリー。