ニコラスと仲間


「へぇ?結構色々載ってるんだなぁ…」


そう言って、しみじみと手元を覗き込んでくる玄兎に、アレックスは小さく笑った。


読んでいたのは、事務所に置いてあった『本』。

それを、アレックスより長く便利屋にいる玄兎が目にしたことがない、訳がない。


だというのに、その口振りはまるで初めて見たかのようで―…


「玄兎も、『これ』を見て覚えたんでしょ?」

「え?あ、いや俺のは独学…っていうか、二人の見よう見まねっていうか、割と適当っていうか?」


言いながら忙しなく動く玄兎の手に、アレックスは何気なく目を留めた。


それは確かに玄兎の言う通り出鱈目に見えたが、いつもニコラスに向けられているものと変わらないようにも見える。


「それにアイツ、唇読めるだろ?だからそもそも俺の手なんて見てねぇよ、多分。」

「そうかしら…?」

「絶対そうだって。ちょっと見てろよ。…おい、ニック!」


仕事に向かう時間になったのか、ちょうど一階から上がってきたニコラスを玄兎が呼び止める。

そしてまた、その手が忙しなく動いた。


「お前、相変わらずチビだなぁ。」


と同時に、突然飛び出した悪口に驚いたのはアレックスだけ。

玄兎は相変わらず笑っていて、ニコラスはその様子をただ横目に見ながら静かに壁の上着へと手を伸ばす。


かと思えば不機嫌そうに顔を歪め、「ふん」と鼻を鳴らしながらもう片方の手を玄兎に向けて何やら動かすと、さっさと事務所を出て行ってしまった。


「ほらな、『うるせぇ』ってよ。」


その背中を見送った玄兎が、我が意を得たり、と自信満々に振り向く。

それにどう応えたものかと一瞬迷ったアレックスは、とりあえず苦笑で返した。


「ところで玄兎は今、何て『言った』の?」

「うん?『誰よりも愛してる』って。」

「え、…」


笑う玄兎の言葉に、ふとアレックスの脳裏を過ったのは先程の二人のやり取り。

何か引っ掛かるものを覚えたものの、それを口にするより先に「やべ!俺も行くんだった!」と慌てて腰を上げた玄兎に遮られてしまう。


「ウォリックもそろそろ戻ってくるから、後はよろしく!」

「あ、うん…行ってらっしゃい。気を付けてね。」


そしてニコラスの後を追う玄兎の背中を、アレックスもまた見送ったのだった。






答え合わせは必要ない。

(どちらの『言葉』が伝わったのか)
(どこまで正しく伝わったのか)


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254500hitより。
キリリクありがとうございました!



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嘘つき、ロンリー。